2019 Fiscal Year Research-status Report
Studies on Henri Fantin-Latour, from the point of view of artistic exchanges
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19K00170
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
三浦 篤 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (10212226)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ファンタン=ラトゥール / ホイッスラー |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は7月にイギリスに出張し、ロンドンとグラスゴーで調査を行った。 ロンドンではヴィクトリア・アンド・アルバート美術館所蔵のファンタンの静物画4点とテイト・ギャラリー所蔵の肖像画1点を調査した。前者の花の絵は、旧イオニデス・コレクションの《チューリップ、アザレア、バラ》とデッサン教室用の3点《サクランボ》《ユリの枝》《2つのヒナゲシ》で、後者は《エドウィン・エドワーズ夫妻の肖像》である。19世紀当時にサウス・ケンジントン美術館(ヴィクトリア・アンド・アルバート美術館の前身)が「デッサン教室用の3点」をエドワード夫人(ルース・エリザベス)から購入していることから、ファンタンとイギリスとの関係を証する具体例が静物画と肖像画を通して判明した。コレクターの趣味の対象としてのみならず、美術教室の植物写生教材としてファンタンの花の絵が求められたことは興味深い。 グラスゴーでは、グラスグー大学図書館に所蔵されているファンタン=ラトゥールのホイッスラー宛て書簡18通を閲覧した。自分自身やパリ美術界の近況を知らせる内容の書簡で、1860 年代の前半から中葉にかけて二人の画家が手紙のやり取りを通して緊密な交友を保っていたことが理解できる。1863年の「落選者展」について詳しく知らせている書簡などは、ファンタンとホイッスラー、さらにはマネやルグロなども含め、ポスト・レアリスム世代の若い画家たちが共同戦線を張っていたことを示唆している。 この他、日本国内では国立西洋美術館が所蔵する1860年代のファンタンの静物画も調査した。比較的大きなサイズで複雑な構図を示すこの年代の花の絵は、日本では他にアーティゾン美術館にしかなく、貴重な作例と言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度前半は研究を順調に進めることができたが、後半は11月に入院手術と術後療養があったことと、年明けから新型コロナウィルスの感染拡大が進んだので、予定通り調査を進めることができなかった。そのため、秋もしくは3月に予定していた海外出張をキャンセルせざるを得なかったのが主たる理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度には遅れている研究計画を推進したいが、新型コロナウィルスの感染拡大が終息しないと海外調査に行くことができない。秋以降にフランスとアメリカで調査が可能になることを願っているが、それまでの間は、日本においてこれまでの調査結果を整理したり、インターネットでデジタル・アーカイヴにアクセスしたりして、可能な限り研究を進めて行くことを考えている。まずは、研究計画を立て直したい。
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Causes of Carryover |
2019年度後半は,11月に入院手術と術後療養があり、年明けから新型コロナウィルスの感染拡大が進んだので、予定通り調査研究を進めることができなかった。秋もしくは3月に予定していた海外出張をキャンセルせざるを得ず、その出張旅費が残ってしまったのが、次年度使用額が生じた理由である。2020年度は、ウィルス感染が終息した後にフランス(パリ、グルノーブルの美術館)とアメリカ(ロサンゼルス、ヒューストン、ダラス他の美術館)で作品資料調査を行う予定であり、その旅費として使用したい。
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