2021 Fiscal Year Research-status Report
Studies on Henri Fantin-Latour, from the point of view of artistic exchanges
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19K00170
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
三浦 篤 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (10212226)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ファンタン=ラトゥール / マネ / 美術と音楽 / オットー・ショルデラー / ヴァーグナー / ベルリオーズ |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度はコロナ禍のために海外調査が困難な状況であり、これまで収集した文献、資料の整理・読解によって研究を続行した。ファンタン=ラトゥール関係の資料・文献を整理し、集団肖像画に関する19世紀当時のサロン批評、ファンタン夫人編纂の作品目録、展覧会カタログなどに基づき研究を進めた。 特に、ポスト・レアリスム世代の画家としてのファンタン=ラトゥールの友人関係を研究対象とした。昨年度から開始している、ファンタンが交流したドイツの画家オットー・ショルデラーとの書簡集(2011年)の読解を継続し、ファンタンとショルデラーの親密な友人関係を深く理解できた。また、両者ともに音楽好きであり、美術と音楽という本研究のテーマともつながる。 ファンタンと音楽に関しては、ヴァーグナー体験が重要で、1861年の「タンホイザー」パリ公演、1876年にバイロイトで観劇した「指輪」に関係する絵画・版画作品を洗い出し、詳しい文献調査を行った。ファンタンが好んだベルリオーズについても、同様の作業を行い、特にベルリオーズにオマージュを捧げた作品《記念日》(1876年)に関する資料を調べた。ヴァーグナー、ベルリオーズともに音楽評論家アドルフ・ジュリアンが伝記を刊行しているが、友人であるファンタンはそれらの著作にリトグラフのオリジナル作品を提供している。 一方、マネとファンタン=ラトゥールとの友情と共闘について、日仏美術学会のマネ・シンポジウムで発表を行った。1857年にルーヴル美術館で知り合った二人の画家はヴェネツィア派やベラスケスの絵を愛好する共通性を持ち、1860年代には革新的なレアリスム絵画で絵画界を揺るがしたマネと彼を囲むグループを擁護する集団肖像画(1864年、1865年、1870年)と単独の肖像画(1867年)を、ファンタンはサロン(官展)に発表しているのである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2021年度は、新型コロナウィルスの感染拡大が収まらなかったので、予定していた海外の美術館における調査研究を実行することができなかった。その代わり、日本でできる作業として資料や文献中心のやり方で研究を進め、テーマを深めることはできた。しかしながら、以上の状況から、全体としては計画が遅滞することとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度への調査研究の延長が認められたので、遅れている研究計画を推進する。新型コロナウィルスの感染拡大が衰えを見せつつあるので、秋以降に海外調査を行いたい。それまでの間は日本においてこれまでの調査結果を整理し、文献中心の研究を進め、インターネットでデジタル・アーカイヴにアクセスするなどして、研究を進めて行くことを考えている。
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Causes of Carryover |
2021年度後半は新型コロナウィルスの感染状況に良化の兆しが見えなかったので、予定通り調査研究を進めることができなかった。予定していた海外出張をキャンセルせざるを得ず、その出張旅費が残ってしまったのが、次年度使用額が生じた理由である。延長が認められた2022年度は、海外で作品資料調査を行う予定であり、その旅費として使用したい。
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