2023 Fiscal Year Annual Research Report
倭館を介在した朝鮮王朝における日本陶磁の受容とその影響
Project/Area Number |
19K00171
|
Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
片山 まび 東京藝術大学, 美術学部, 教授 (80393312)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 朝鮮陶磁 / 日本陶磁(肥前) / 倭館 / 日朝関係 / 高麗茶碗 |
Outline of Annual Research Achievements |
科研費助成によって得られた研究実績の概要は以下のとおりである。 草梁倭館初の遺跡調査に関する報告書作成:草梁倭館についての研究対象は文献が中心であり、考古学的な発掘調査はきわめて乏しい状況にあった。申請者は平成30年8月に釜山博物館文化財調査チームとともに船滄付近の一角を調査し、500点余りの日本陶磁や倭館窯の陶片を発見した。コロナ禍のため整理作業には中断があったものの報告書を完成、令和5年度に『訳官使・通信使とその周辺』にその日本語版概報を掲載し、令和6年3月に開催された韓日関係史学会において報告を行った。 日本陶磁の窓口としての草梁倭館の解明:ソウルの朝鮮時代の遺跡では日本陶磁が出土するが、その窓口である倭館での陶磁器交易の実態については未解明のままにあり、先の考古学的な手法とともに、令和4年度より池内敏先生の率いる訳官使・通信使とその周辺研究会に参加し、媒介者となった訳官について文献研究の成果を反映することができた。 朝鮮青花への「影響」の再考:先学により19世紀の朝鮮青花の文様に対する日本陶磁の「影響」が指摘されてきたが、①対馬経由で持ち込まれた日本陶磁には倭館で消費された一群、②朝鮮向けに特化した輸出品の一群、③贈物等の一群があることを明らかとした。②③については朝鮮独自の嗜好(注文)により輸入されており、その「影響」は限定的であるとの結論に至った。むしろ朝鮮青花の様式は清朝磁器と日本陶磁(肥前磁器)と朝鮮王朝の嗜好が交錯するなかで醸成され、「影響」という単純な言葉では語りきれないことを、Leeum美術館『朝鮮の白磁、君子志向』展図録において発表した。そのほか、訳官が日本からの茶碗注文に関わった判事茶碗について、その具体的な窯と朝鮮地方窯への影響について初めて明らかとし、東アジア日本研究者協議会で発表、『訳官使・通信使とその周辺』に報告を掲載した。
|