2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19K00173
|
Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
吉住 磨子 佐賀大学, 芸術地域デザイン学部, 教授 (20284622)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 百武兼行 / 鍋島直大 / 佐賀藩の芸術保護 / 日伊関係史 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年に刊行した論文「イタリア時代の百武兼行Ⅲ<ピエトロ・ミッカ図(1882)>制作の背景」をその後の研究成果に基づき,「イタリア時代の百武兼行Ⅶ-<ピエトロ・ミッカ図(1882)について-補遺と修正」を勤務先の紀要に発表した(2023年3月)。前稿から,いちばん大きな修正箇所となったのは,百武の代表作の一つである本作品の最も重要な影響源となったものを,ジュゼッペ・カッサーノによる立像(1864,トリノ)であるとした点である。カッサーノ作品制作の歴史的背景を詳しく精査することにより,この修正稿の説得性を高めた。また,前稿では明らかにできなかったカッサーノ作品に象られた斧の典拠を,1706年に刊行されたジュゼッペ・マリア・ソラ―ロの著作と特定し,百武作品の中にも斧が描かれていることに言及した。これによって,百武は<ピエトロ・ミッカ図>を,18世紀から19世紀中頃までの先行するミッカ図(像)の図像をよく研究した結果生み出したという前稿での指摘をさらに裏付けることができた。 また,2023年3月4日には,「近代日本と近代イタリアの共鳴-佐賀の近代史と日伊関係史から照射する日本近代美術史の新側面」と題する学際的な公開コロキアムを佐賀において開催し,本研究の成果を広く一般にも知らしめた。ディスカッションにおいては,活発な意見交換が行われ,それによって,新たな課題も明らかとなるとともに,本研究で得た成果をさらに発展させていく具体的な道筋も見つかった。 1990年代以降,殆どなされていなかった百武研究に着手し,これまで不明であったイタリア時代の百武についての諸点を1次資料を傍証としながら明らかにできた点は,本研究の大きな成果である。一方で,百武のイタリア時代に限ってもまだまだ不明の点は残されており,本研究,さらに総括的な百武研究を継続的に実施していく必要性を感じている。
|