2019 Fiscal Year Research-status Report
フォンテーヌブロー派における北方絵画の影響について
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19K00174
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Research Institution | Bunsei University of Art |
Principal Investigator |
田中 久美子 文星芸術大学, 美術学部, 教授(移行) (70222114)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | フォンテーヌブロー派 / ジャン・クーザン / ジャン・クルーエ / フランソワ一世 / ヨース・ファン・クレーフェ |
Outline of Annual Research Achievements |
フォンテーヌブロー派における北方絵画の影響を研究するために設定した第一のテーマはフォンテーヌブロー派の版画研究である。その目的のために、2019年11月3、4、5日の三日にわたり、メトロポリタン美術館で開催された『エッチングのルネサンス展』を訪れた。またこの展覧会についての報告を『文星紀要』に掲載した。この展覧会を企画・実行したC.ジェンキンスの著作を始めとして、これまで資料収集を行っており、フォンテーヌブロー派の現存する版画はほぼ入手している。今後、これらの資料を分析し、フォンテーヌブロー派への北方絵画の影響を具体的に考察する作業を引き続き行う予定である。 第二のテーマはフランスで活躍した北方の画家たちの作品研究である。資料・画像データの収集を目的として、2019年、8月26日から9月2日までフランスで現地調査を行った。パリで活躍した北方画家の作品を収蔵している教会(Saint-Merry, Saint Etienne du Mont他)やエクアン城などで作品の撮影を行いデータの収集を行った。パリの教会は16世紀に当地で活躍した北方画家たちの作品を所蔵するだけではなく、第三の研究テーマに挙げているジャン・クーザンの下絵に基づくステンド・グラスも有しており、同時に撮影を行い、画像・資料収集につとめた。 第三のテーマはジャン・クーザン、第四のテーマはジャン・クルーエ研究である。ジャン・クーザンに関しては上記に記したとおりである。ジャン・クルーエに関しては画像・研究資料の収集につとめた。また収集した資料に基づき、クルーエが手掛けた肖像画にどのように北方絵画がかかわっているかのか、そしてクルーエが何をフランス絵画にもたらしたのかについて、具体的に調査・分析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の遂行に関して以下の4つの研究目的/方法を予定していた。1)フォンテーヌブロー派の版画研究について:当初の目的どおりにメトロポリタン美術館での展覧会を実見し、フォンテーヌブロー派の版画のデータもほぼ収集できた。今後、分析を徹底したい。2)、3)はパリにおける北方の画家たちの調査である。科研初年度にパリ、エクアンを訪れ、ある程度の作品を実見し、画像を収集したものの、改装工事などで予想外の閉館があり、まだ資料の収集は不十分で、引き続き行う必要がある。4)ジャン・クルーエ研究は想定以上に進展し、すでに論考として発表を予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
申請時に設定した4つの具体的方法に従って引き続き研究を進めてゆきたい。1)フォンテーヌブロー派の版画研究については、版画そのものの資料はそろったので分析を行う。とりわけ、風景画に関して北方の作品比較など具体的な作品を取り上げて、北方絵画のフランスへの浸透の様相を具体的に考察したい。2)フランスにおける北方の画家たちの活躍については、現地調査が不十分で資料が集めきれていないので、引き続き現地調査及び文献収集を行ってゆく。調査の過程で、申請時には考えていなかった北方出身の画家ヨース・ファン・クレーフェが浮かび上がった。北方の画家だがフランスでも数々の作品を手掛けており、本研究において重要な役割を果たしていると思われる。この画家についても資料を収集し具体的に研究してゆきたい。3)ジャン・クーザンのパリ時代の研究については、ある程度、画像を収集したものの、引き続き画像・資料収集を行い、分析・研究を行いたい。4)ジャン・クルーエ研究については最も進展した。今年度は息子であるフランソワにまで視座を広げ、北方絵画がフランスにおいてどのように受容され、変容していったのか、何が新たに生まれたのかについて考察を深めたい。
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Causes of Carryover |
旅費が計上したよりも下回った。その分を今年度予定している旅費に計上したい。
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Research Products
(2 results)