2020 Fiscal Year Research-status Report
バーミヤーン壁画の描き起こし図の作成とその美術史的研究
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19K00184
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
宮治 昭 龍谷大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (70022374)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩井 俊平 龍谷大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (10392549)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | バーミヤーン / 仏教石窟壁画 / 大仏 / アフガニスタン仏教美術史 / 中央アジア文化交流史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、バーミヤーン石窟壁画について(1)最も重要な東西の二大仏の仏龕に描かれていた壁画を中心に、遺跡破壊前に撮影された写真データによって仏龕壁画展開図を作成し、それに基づいて仏龕壁画の描き起こし図を作成すること、(2)それと連動させて石窟構造と壁画の美術史的研究、(3)年代・編年を含めた歴史的位置づけを行うことを目的とする。 本年度は昨年度に引き続き東大仏壁画の描き起こし図の制作、および西大仏壁画の写真展開図の作成、並びにバーミヤーン石窟の美術史的研究の基礎となる文献的な歴史研究、石窟構造とそこに描かれた壁画に関する研究会を開催した。また、バーミヤーン壁画とも関係の深いガンダーラの大乗仏教美術に関する研究を行った。 (1)については、京都大学人文科学研究所所蔵の膨大な写真データの中から、西大仏の壁画を選別、整理し、仏龕壁画の写真展開図の作成を専門の業者に委託し、宮治が確認しながら作業を行った(10分の1縮尺)。ただし、写真データも様々であるため展開図の繋がりが不鮮明な箇所が多々あり、次年度にさらに緻密に検討し完成させることとした。 (2)(3)については、不明な点の多いバーミヤーン石窟の歴史的背景、および石窟の建築構造や壁画の比較検討を進め、2回の研究会を主催した。 第1回研究会(2020年9月26日)では、宮本亮一「6-8世紀のヒンドゥークシュ山脈南北の歴史」、稲葉穣「文献史料に見えるバーミヤーン遺跡」の研究発表に宮治、岩井がファシリテーターとして参加し、議論し、意見交換を行った。第2回研究会(2020年12月19日)では、岩井俊平「バーミヤーン地域のスキンチ・アーチ」、窪寺茂「バーミヤーン石窟寺院の天井論」について同様に議論・意見交換を行った。以上の研究会はバーミヤーン壁画の美術史的研究にとって多くの有益な情報と示唆を得ることができ大層有意義であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度に東大仏の仏龕壁画の写真展開図を完成させることができ、2020年度にそれに基づく描き起こし図に取り組んだ。その過程で、後世に残る正確な図面に仕上げるために、中央アジアの仏教壁画の模写の専門家である京都芸術大学准教授正垣雅子氏に制作を依頼し、宮治の監修のもとで鋭意完成を目指した。鉛筆描きは終了したが、墨入れには天井側壁に描かれていた王侯・貴族の冠飾や服飾などの細部を詳細に検討する必要があると認識するに至り、監修者と制作者との密なやり取りがコロナ感染の状況下で支障をきたし、完成にやや遅れが生じている。 また、西大仏の仏龕壁画の写真展開図の作成に関しては、破壊前の京都大学人文科学研究所所蔵資料を中心に調査し、それを基に業者に委託して作成を行っている。東大仏に比べ西大仏は規模も大きく、宮治の現地での図面と照らし合わせながら、細部を検討しつつ作業を行っており時間を要しているが、間もなく完成の予定である。西大仏の仏龕壁画の描き起こし図も2021年度に完成させるが、その過程で壁画の細部が明確になることも多く、モティーフの比較研究などに役立つことが多い。 2020年度は研究会を2回主催し、バーミヤーンの歴史的背景に関する研究、および石窟の建築構造や壁画装飾との関係などについて、関連地域との比較検討を行うことができた。バーミヤーン壁画の年代の総合的検討という目的についても見通しが開け、研究の進展があった。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)破壊前の近接写真の調査とデータ化については、引き続き、国内の所蔵機関での調査を行い、資料を整理しながらデータ化を行う。また、西大仏の仏龕壁画の写真展開図は専門の委託業者と宮治が連携しながら完成させる。また東大仏の仏龕壁画の描き起こし図は模写の専門家である正垣氏と連携しつつ完成させる。西大仏の仏龕壁画の描き起こし図については写真展開図をもとに正垣氏と検討、修正を重ねながら制作を行い、完成を目指す。 (2)周辺地域の壁画美術との比較研究については、アジャンター石窟をはじめとするインド各地の遺跡、ガンダーラの遺跡、ペンジケントをはじめとする西トルキスタンの遺跡などとの作例との検討を行っていく。作成した部分的な描き起こし図を活用しながら、東西文化交流の中でのバーミヤーン美術の位置づけを考察する。(3)これらの成果を生かしつつ、放射性炭素年代測定との比較検討を行い、総合的にバーミヤーン壁画の編年を考察する。
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Causes of Carryover |
西大仏仏龕壁画の写真展開図作成については本年度に終える予定であったが、より精細な展開図の作成に向けて、細かくモティーフや装飾など細部を修正しており、専門業者と確認作業が続行中であるため、2021年度に配分を行った。 また、コロナウィルス感染拡大によって描き起こし図の制作にも影響が出ており、旅費・謝金等の配分に次年度使用額が生じた。これらについては2021年度に行う予定である。
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[Book] The Global Connections of Gandharan Art2020
Author(s)
Wannaporn Rienjang and Peter Stewart(ed.), Warwick Ball, Martina Stoye, Peter Stewart, Tadashi Tanabe, M.E.J.J. van Aerde, A.D.L. Mohns, and A.G. Khan, Shumpei Iwai, Ken Ishikawa, Joy Yi Lidu, Juping yang, Ian haynes, Iwan Peverett, Wannaporn Rienjang with contributions by Luca M. Olivieri
Total Pages
264
Publisher
Archaeopress Publishing