2019 Fiscal Year Research-status Report
A historical study on the correlation between Otsu-e and performing arts in the Edo period
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19K00185
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Research Institution | Kyoto Seika University |
Principal Investigator |
鈴木 堅弘 京都精華大学, 人文学部, 研究員 (80567800)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 大津絵 / 浮世絵 / 芸能 / 民藝 / 図像学 / 歌舞伎 / 民画 / 浄瑠璃 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度の研究課題としては、パリの日本文化会館にて、4月~6月のパリ大津絵展のオープニング・シンポジウムにて、「大津絵」と「芸能」に関する国際発表を実施した。また7月にはEFEO-KYOTO(フランス国立極東学院-京都支部)にて、初めての共同研究会を実施した。研究活動および実績は、以下の通りである。 1.国際研究発表:パリの日本文化会館にて、「Otsu-e and Edo culture of the 18th century-Japanese puppet performance,Ukiyo-e,Festival-」と題する国際発表をおこなった。そこで、「大津絵の画題」と「江戸時代の浄瑠璃芸能」との関連を示す共に、「鬼の念仏」や「藤娘」などの大津絵の画題が「祭礼」に用いられた事例を報告した。 2.国際共同研究会:大津絵の国際的な共同研究会を、EFEO‐KYOTOにて実施した。ゲストスピーカーとして、EFEO東京支部からフランソワ・ラショー先生を招き、日本文化における「鬼の意味」と「大津絵」に関する講演をして頂いた。また本研究会において、2020年度に実施予定のアメリカでの大津絵調査の場所や日程などの計画を話し合い、調査候補地を五か所ほどに絞り、現地調査に向けての準備を実施した。 3.寄稿論文等:2020年1月に『大津絵』(No.52)に「大津絵「槍持奴」と江戸の芸能-〈奴振り〉と〈碁盤人形〉を中心に-」と題する論考を発表した。本考察にて大津絵の画題「槍持奴」の絵相が、当時の「奴振り」や「碁盤人形」との関りのなかで描かれたことを論じている。 4.今後の研究成果と課題:2020年度は、当初予定していたアメリカの美術館・博物館での大津絵調査を実施する。候補地として、ホノルル美術館、シアトル美術館、メトロポリタン美術館等を予定している。ただし、コロナ感染の影響のために調査および渡航の実施が危ぶまれることにより、共同研究員のメンバーと入念に話し合いを行い、無理のないスケジュールを組むつもりである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は、当初の研究計画にしたがい、パリにて実施された大津絵展のオープニング・シンポジウムにて、「大津絵」と「芸能」に関する国際発表を実施した。国際的な場にて、同展覧会と本研究課題を結びつけ、かつ「大津絵」と「近世芸能」の関連性を国際的な人々に伝えることができたのは非常に有意義であった。 またEFEO-KYOTOにて、2019年7月に同研究課題の共同研究会を実施し、最新の大津絵に関する研究成果や論文に関する情報を研究協力員にて共用することができた。その際、これまで未調査の大津絵作品が数多く残されているアメリカの博物館・美術館に関する情報を共同研究員のメンバーにて共有できたことは、今後の調査がスムーズに進行する第一歩となった。 他方、論考としては、「大津絵「槍持奴」と江戸の芸能-〈奴振り〉と〈碁盤人形〉を中心に-」と題し、大津絵の画題を「近世初期の芸能文化の位相」で読み解く研究成果を発表できたことは、次年度の研究課題に繋がるものとなった。 ただし、当初の予定である2019年度に行う国内の博物館・美術館における大津絵に関する所蔵調査や芸能に関する文献調査が昨年度に実施できず、今後、積極的に国内の大津絵調査や芸能資料調査を進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、一年間かけて、アメリカの博物館・美術館での大津絵の遺存調査を、同研究課題における研究協力員の協力のもと、順次実施していく予定である。候補地として、ホノルル美術館(旧リチャード・レインコレクション)、シアトル美術館(旧宮又一コレクション)、ボストン美術館(旧ロバート・トリート・ペインコレクション)、メトロポリタン美術館(旧ハリー・G.C・パッカードコレクション)等を挙げている。各所では、江戸時代の大津絵の調書作成・閲覧・撮影を実施する。その際の具体的な調査計画を、今年度、夏期から秋期にかけて一度、EFEO‐KYOTOにて同研究課題に関する共同研究会(第二回目)を実施し、調査員の人選およびスケジュールを綿密に計画する予定である。ただし、コロナ感染の影響により、アメリカへの渡航および調査が予定通り進まないことが十分に考えられるため、国内の博物館・美術館における大津絵所蔵調査も、順次、積極的に実施していくつもりである。
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Causes of Carryover |
昨年度末に、コロナ禍の影響により、国内の博物館・美術館に所蔵されている大津絵に関する遺存調査が実施できなかった。 また昨年度末に、ホノルル美術館での大津絵の現地調査を予定していたが、こちらもコロナ禍の影響で実施できなかった。このような国際的かつ社会的な災禍のために、2019年度の研究費に未使用額が生じた。当初の研究計画による執行額とは異なるが、「研究課題の遂行」や「国内外の博物館・美術館における大津絵に関する調査予定」に大きな変更はない。
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