2020 Fiscal Year Research-status Report
A comprehensive research on the "brand" of portraits in the fifteenth-century Burgundian court
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19K00186
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| Research Institution | Osaka Ohtani University |
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Principal Investigator |
今井 澄子 大阪大谷大学, 文学部, 教授 (20636302)
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| Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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| Keywords | ブルゴーニュ / フィリップ善良公 / シャルル突進公 / ネーデルラント / フランドル / ブランド / 肖像画 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、①肖像が普及した15世紀ヨーロッパにおいて、北方のブルゴーニュ公国が営んだ宮廷美術が担った重要性を「ブルゴーニュ・ブランド」として示すこと、②三代目ブルゴーニュ公として多くの肖像を残したフィリップ善良公（ル・ボン）が、ブルゴーニュ公国の豊かなコレクションの伝統を背景に、美術作品を使い分けていた様子を明らかにすること、③「ブルゴーニュ・ブランド」の分析を通して、「ブルゴーニュ公国像」を問い直すという今日の学術的課題に、美術史研究の立場から貢献することである。
研究期間の二年目にあたる本年は、フィリップ善良公の肖像の特性と「ブルゴーニュ・ブランド」の核心を捉えるため、(1) 昨年度に引き続き、フィリップ善良公の肖像リストの作成を進めた。そのうえで、フィリップ善良公の肖像の比較対象として、(2) 四代目ブルゴーニュ公シャルル（突進公）の肖像表現についての分析を行い、その成果を英語論文として公表した。また、(3) ブルゴーニュ宮廷の美術が神聖ローマ帝国、フランス、地中海世界などヨーロッパ各地へと伝播していくさまを論じた書物を編著者として出版し、伝播にあたっても肖像が重要な役割を果たしたことを示した。さらに、(4) ブルゴーニュ宮廷美術を論じた研究書の書評執筆を通して、タピスリーをはじめとする織物が、本研究課題にとって重要であることを確認した。この点については、次年度刊行予定の図書（共著）において、ブルゴーニュ公の注文によって制作されたタピスリーが、後継者にいかに受容され展示されていったかを論じた（査読済）。そして、(5)「ブルゴーニュ・ブランド」に関わる「豪華さ」の概念と関係作品の分析を行い、論文執筆を進めている。
以上のように、本年度はフィリップ善良公の肖像に関わる情報を集積しつつ、個別作品の分析を進めることで、成果をあげることができた。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、フィリップ善良公の肖像リストの作成に取り組みつつ、個別の作品調査・分析と「ブルゴーニュ・ブランド」の検討を進めていく計画であった。このうち、肖像リストについては、昨年度の成果に基づき補完作業を進めることができた。また、フィリップ善良公の比較対象として四代目ブルゴーニュ公シャルルの肖像表現を分析した英語論文を発表することで、フィリップ善良公の肖像が持つ影響力の大きさを示すことができた。他の作品については、広義の肖像表現を視野に入れつつ個別に検討を進めたが、とくに、ブルゴーニュ宮廷美術の伝播をめぐる事例分析を蓄積できたことが収穫である。さらに「ブルゴーニュ・ブランド」の概念をめぐる検討も進め、論文執筆に着手した。以上の研究成果のなかには今年度の発表に至らなかったものもあるが、次年度には論文として公表できる見込みである。
他方で、COVID-19の世界的流行により、今年度に予定していたヨーロッパ各地での調査は遂行できなかった。この点については来年度以降の課題となる。とはいえ、三年目以降に本格的に実施する予定であったブルゴーニュ宮廷美術の受容をめぐる検討を順調に進め、歴史的展開をより明確につかむことができた。以上の点から、本研究はおおむね順調に進展していると言える。
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| Strategy for Future Research Activity |
次年度も、フィリップ善良公の肖像リストの保管作業を継続しつつ、ブルゴーニュ公の肖像の個別分析を進めていく。その際には、広義の肖像表現も射程に入れつつ描写の写実性・象徴性に注目した詳細な図像分析を行うことで、「ブルゴーニュ・ブランド」の核となる特徴を抽出していく。同時に、「豪華さ（magnificence）」の概念がブルゴーニュ公の肖像とその関連作品にどのように反映されているのかという観点からの分析も行う。
さらに、フィリップ善良公が、豊かなコレクションに基づき美術作品を使い分けていた様子を明らかにするという本研究の目的を果たすため、ブルゴーニュ公が所蔵していた美術作品の分類と分析を重点的に行う。この点については、調査することができる現存作品が限られるため、目録や目撃史料も含めて検討していく計画である。同様に、ブルゴーニュ宮廷美術が国際的に受容された事例についても引き続き調査していく。
なお、研究遂行にあたってはベルギー・オランダ・スペインなどにおける作品調査も予定しているが、COVID-19の収束の見込みが立たないので、まずは所属研究機関などを通じて手配することが可能な文献・写真資料を優先的に確保し、国内で実施可能な作品分析を進めていく。それぞれの研究成果は、随時、口頭発表または研究論文の形で公表していく計画である。
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| Causes of Carryover |
本研究課題を進めるために、2020年度中にベルギー、フランス、およびスペインに出張し、作品調査および文献・写真資料の購入を行う予定であった。しかし、COVID-19の世界的流行がおさまらず、延期せざるを得なかった。次年度以降は、現地での調査・検討を遂行する可能性を探りつつ、遠隔で手配することが可能な文献・写真資料を優先的に確保し、国内で実施可能な作品分析を進めていく。
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