2021 Fiscal Year Annual Research Report
The Reserch of OKURA Magobei in Modern Japan Art History
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19K00187
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Research Institution | Kanagawa Prefectural Museum of Cultural History |
Principal Investigator |
角田 拓朗 神奈川県立歴史博物館, 学芸部, 主任学芸員 (80435825)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
赤木 里香子 岡山大学, 教育学研究科, 教授 (40211693)
山口 健二 岡山大学, 教育学研究科, 教授 (90273424)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 近代日本美術史 / 輸出美術 / 明治浮世絵 / 近代陶磁史 / 近代出版史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本調査研究に関して、大倉孫兵衛の活動とその存在の美術史上の意義について解き明かした。具体的には、《大倉孫兵衛旧蔵錦絵画帖》を起点として、以下の三点を明らかにした。第一に、明治浮世絵史のなかでの貢献、特に輸出錦絵の作品分析とその制作背景を明らかにした。上記画帖を中心に分析し、錦絵版元としての活動を時期や版元としての特徴を明らかにした。第二に、近代陶磁史のなかでの貢献、特に輸出錦絵との接点を明らかにすることで、陶磁器のディレクターであったことを明らかにした。特に輸出陶磁器制作を主導した背景を錦絵事業との相関関係で推定した。第三に、以上を包含する視点として、輸出美術の大枠を措定し、その中心人物としての大倉孫兵衛の役割を具体化した。「雑貨」を扱う森村組というその出発点に立ち返り、その買付と商品改良指導の支配人だった孫兵衛の位置づけを再評価した。あわせて明治期の横浜の輸出美術の詳細を史料から明らかにし、その広がりと孫兵衛が扱ったという物品との相互関係も検証した。この第三点の考察からは、孫兵衛の活動がさらに多面的であると示唆され、金工や漆工などの諸分野へも広がる可能性を示唆することにつながった。以上を通じて、近代日本美術史がこれまで明らかにしてきた「美術」の成立に対して、その議論を補完する事例報告となり、かつ国際美術交流史の一面において、特に手薄だった日米美術交流史の具体化への貢献ともなる研究となった。
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