2021 Fiscal Year Annual Research Report
江戸時代の東北画家における地域と階層に由来するアイデンティティの基礎的調査研究
Project/Area Number |
19K00190
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
杉本 欣久 東北大学, 文学研究科, 准教授 (80463446)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 東北地方の画家 / 江戸時代の画家 / 御用絵師 / 町人絵師 / 武士の絵画 |
Outline of Annual Research Achievements |
江戸時代における東北諸藩に所属もしくは領地に生まれた画家を34人に絞り、その人となりや活躍を記した基礎となる文献を調査し、それぞれの城下町や宿場町といった「出身地域」と 武士や町人などの「身分階層」の2つの環境要因により、どのような感性や嗜好が育まれ、作画活動に反映したのかを明らかにするため、画家の伝記や作画活動を伝える文献資料を『東北画人基礎資料集』という成果物を作成した。 これを美術史研究者、大学図書館、東北地方の主な図書館に配布し、東北の画家に対する美術史研究の活性化、さらに各地域の文化財に対する認識の深まりを期した。結果として、各画家の菩提寺および子孫との交流が生まれ、いくつかの資料に関する情報が寄せられた。 これらの画家は、おおむね絵画制作を本業として一定の扶持や所領を拝領して大名家に仕える「御用絵師」、藩に所属して俸禄を賜いながら職務を遂行し、 一方で余技として絵筆をふるった「武士」、さらに藩領の城下町や宿場町で生まれて画家となった「町人絵師」の3つに大別できる。後者ほど活動領域における自由度が高くなるため、それが所属流派や絵画表現を左右する大きな要因となっていた。さらに「武士」の場合には、藩主との関係において活躍した人物が多かったため、藩主の交流や嗜好が作画活動や表現内容に影響を与えた。「町人絵師」の場合、特に出自となる家業が重要であり、旅籠屋や寺子屋、私塾などに生まれた画家は外部への関心が強く、早い段階で江戸や京都へ留学して大成する傾向があると判明した。以上で取り上げた画家の多くは東北の地方史のみで知られていたものの、実際は江戸や京都などとも深い結びつきを有し、ローカルに終始するものではないことを明らかにした。
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Research Products
(2 results)