2019 Fiscal Year Research-status Report
Iconological Study of the sculptures of Baccio Bandinelli
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19K00191
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
甲斐 教行 茨城大学, 教育学部, 教授 (60323193)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | バンディネッリ / クレメンス七世 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年7月末から9月末までイタリアに研究滞在を実施した。16世紀フィレンツェの彫刻家バッチョ・バンディネッリの作品を庇護者クレメンス七世(ジュリオ・デ・メディチ枢機卿)の思想に基づいて読み解く試みの前提条件として、枢機卿時代のジュリオの庇護下にあったクリストーフォロ・マルチェッリが1519年に起草し、ジュリオの分身ユリダスが登場人物の一人として主役を担う対話篇『運命について』(ヴァティカン図書館ラテン語写本Vat. Lat. 5800)の読解が必要となる。今回の滞在中、フィレンツェで活動する文献学者ヴェロニカ・ヴェストリ氏の協力の下で同写本を読解し、ユリダスが運命決定論とも偶然論とも袂を分かつ、人間の意志による運命の変更を可能と考える思想を担うことが明らかになった。また作者不詳の板絵《バッチョ・バンディネッリのアカデミア》の所有者と再びコンタクトを取り、バンディネッリ家の子孫縁戚である所有者の肖像画を撮影調査した。さらにナポリの国立考古学博物館にて、バッチョ・バンディネッリの作品の着想限となりうる古代ローマ彫刻の人物類型について調査検討した。 帰国後現在に至るまで、クリストーフォロ・マルチェッリ『運命について』で言及される古代文献(プラトン、アリストテレス、プロティノス、キケロ)をも参照しつつ、同写本が前提とする思想的文化背景について調査中である。 またバンディネッリの『素描の書』(フィレンツェ、モレニアーナ図書館所蔵写本)を16世紀当時の絵画彫刻優劣論争及びヴァザーリの『美術家列伝』などとの関連において検討し、その歴史的位置づけについても調査中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
夏期のイタリア研究滞在によって、バンディネッリ作品の読解に必要と申請者が考える写本の読解が可能となり、研究の出発点が整った。コロナウイルス流行の影響により2020年春期のイタリア研究滞在を断念せざるを得なかったとはいえ、『素描の書』に関する論文については次年度中に刊行予定であり、次年度以降の研究のために十分な基礎が築けたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
年度内にできればクリストーフォロ・マルチェッリ『運命について』で言及される古代文献(プラトン、アリストテレス、プロティノス、キケロ)に関する論文を準備する。 またバンディネッリの『素描の書』(フィレンツェ、モレニアーナ図書館所蔵写本)を16世紀当時の絵画彫刻優劣論争及びヴァザーリの『美術家列伝』などとの関連において検討し、その歴史的位置づけについて論文を刊行する。 さらに2020年度中のイタリア研究滞在において、バンディネッリの初期作品《オルフェウス》(フィレンツェ、メディチ=リッカルディ邸)を典拠に基づく多角的な図像解釈研究に本格的に着手する。
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Causes of Carryover |
コロナウイルス流行のため2020年3月に予定していた海外出張を断念した影響で、イタリアで閲覧の上で購入する可能性のあった書籍等物品費の購入に遅れが生じたことが理由となる。2020年度にイタリア美術史関連の書籍購入に充当する。
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