2019 Fiscal Year Research-status Report
The Influence of Zen Buddhism on the Region of Buddhist Art
Project/Area Number |
19K00192
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
守屋 正彦 筑波大学, 芸術系, 名誉教授 (90272187)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 園城寺派 / 鎌倉新仏教 / 建仁寺 / 甲斐源氏 |
Outline of Annual Research Achievements |
調査を進めるにあたり、蘭渓道隆による甲斐・信濃を中心に布教していく前史が重要な背景と確認し、端緒を開く研究としての意義があった。具体的な内容としては源義光の後裔である甲斐源氏が当初は天台宗を信仰していた背景を調査した。その後、承久の乱を迎えるころに、甲斐源氏は天台宗の信仰を捨て、鎌倉新仏教を導入していったことを明らかにした。 具体的には甲斐源氏の祖とされる新羅三郎源義光が園城寺新羅善神堂で元服し、氏人となったことにはじまる。義光の子である源義業、園城寺僧覚義が甲斐に土着した弟の義清を助けており、孫の源清光、さらに清光の子である武田信義、加賀美遠光、安田義定らが甲斐国内に分流し、天台宗園城寺派の寺院を甲斐国内で建立し、浄土教文化を創出したことを確認した。「甲斐国社記寺記」等の文献を渉猟すると、現在、当時の園城寺派の寺院は、室町時代までには改宗されている。園城寺の公胤のもとに学んだ公暁が1219(建保7)年に将軍実朝を暗殺したことから、鎌倉幕府の勝長寿院、永福寺の法要は園城寺僧から真言僧へと替わり、甲斐国では、その影響から転宗が次第に行われたことが文献調査から明らかとなった。園城寺派寺院の衰退から、鎌倉新仏教移入の傾向が見え、これを背景に蘭渓道隆の甲斐配流を中心に禅宗の地方伝播について考察を進めた。当該年度には京都市建仁寺。長野県上田市安楽寺、また山梨県甲府市東光寺を調査を行った。年度の後半は当初計画した寺院調査を行うことができなかったが、蘭渓道隆の甲斐・信濃での布教の背景を明らかとし、新出の研究成果として、山梨日日新聞に具体的な成果を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度における資料調査は、とくに文献資料を中心に行ってきた。特に甲斐源氏の信仰については、園城寺関連の文献資料を中心に、古代から中世にかけての在地の密教における浄土教文化を確認することができた。寺院に関する調査は、京都市建仁寺、甲府市東光寺、上田氏安楽寺について進めたが、年度の後半に予定した調査は、新型ウィルスの流行と重なり、臨地調査を中止した。しかしながら、文献資料等を渉猟する時間にあてることができ、おおむね順調に進んだと自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
蘭渓道隆が開山あるいは中興開山とする寺院は甲斐で13ヶ寺、信濃で14ヶ寺を数える。地方伝播の在り方はこれまで具体的に検討されてきていない。これからの方策としては、蘭渓道隆が甲斐源氏に及ぼした禅宗文化の影響について、関連の諸寺院を対象に美術資料調査に文献資料を収集する。臨地調査によって、同時代性ある美術資料、寺院の履歴に関連する資料等を明らかとしたい。禅宗は中国僧の蘭渓道隆を迎えて、純粋禅の道場が開かれていくが、道隆の甲斐下向は、禅宗の地方的な展開だけでなく、甲斐から夢窓疎石やその一門が京都での五山文化に大きく関与していると推論し、より具体的な結論を得るよう調査を進める。
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Causes of Carryover |
新型ウィルス流行期にあたり、今年度後半に予定した臨地調査が予定できなかった。これを図書資料の購入に充てたが、当該年度に予定した旅費等が未消化に終わった。次年度以降の使用計画として、文献並びに臨地調査を重ねるとともに、その資料データ化、並びに当初から計画していた年次報告書(中間報告)の作成に充てる。
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