2022 Fiscal Year Research-status Report
The Influence of Zen Buddhism on the Region of Buddhist Art
Project/Area Number |
19K00192
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
守屋 正彦 筑波大学, 芸術系, 名誉教授 (90272187)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 初期禅宗 / 蘭渓道隆 / 純粋禅 / 建長寺派 / 妙心寺派 / 曹洞宗 / 地方伝播 |
Outline of Annual Research Achievements |
禅宗の地方伝播について、蘭渓道隆に関する初期の純粋禅に関わる関連史跡として、相国寺(京都)、久保寺(岡谷市)・法華寺(諏訪市)、光前寺(駒ケ根市)、福岡市博物館、九州国立博物館、円覚寺(福岡市)の調査を行った。また「蘭渓道隆経行像」(鎌倉市建長寺)の影響のもとで描かれた「復庵和尚像自賛」(土浦市法雲寺・重文)、「中峰和尚像」(法雲寺蔵・重文)の影響がみられる「伝小田治久像」など小田氏肖像画に就いて研究成果を発表した。つぎに山梨県内にある臨済宗向嶽寺派について調査を進め、旧仏教である法相宗、さらに真言宗を経て臨済宗となった瑜伽寺(笛吹市)について「古代の医王振興受け継ぐ」と題し発表した(山梨日日新聞2月26日)、あわせて「江戸時代に臨済宗向嶽寺派から妙心寺派へと宗派内での移動があった月江寺(富士吉田市)について、その背景を考察し「山岳信仰の法灯受け継ぐ」と題し発表した(山梨日日新聞7月28日)。平安後期から鎌倉初期には、甲斐源氏の祖新羅三郎源義光が天台宗園城寺新羅善神堂の氏人であったことから、甲斐源氏は天台宗寺院を建立した。しかし源実朝が園城寺に学んだ公暁に暗殺されるに及んで承久年間(1219~22)に天台宗から転宗し、その多くは曹洞宗となった。興因寺(甲府市)を例に末寺309寺が転宗した背景について「三男義清、名門継承の意志」と題し発表した(山梨日日新聞社9月30日)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
純粋禅を布教した蘭渓道隆を中心に、とくに元弘に際し、密偵の疑いを掛けられ、甲斐信濃両国に配流され、蘭渓道隆の開山寺院の半数がこの地域に偏っている。これまでも日本での布教の最初である福岡、京都の関連寺院を調査、また甲斐信濃地域の仁調査を行ってきたが、コロナウイルスがなかなか緩和されない中で、行動に制約がかかり、山陰地方、東海、関東以北については充分な調査が行えなかった。さらに初期純粋禅の布教について、来朝僧無学祖元、また中国へ留学した円爾弁円などについて、夢窓疎石ら後進にどのように影響したかも十分な調査ができなかった。例えば光前寺(駒ケ根市)庭園は蘭渓道隆の作庭とされる。寺は天台宗別格本山で、蘭渓道隆がどのように関与したかの記録はない。ただ、本堂から見る庭園は竜門瀑、鯉魚石を意匠とした蘭渓道隆の様式庭園と見なすことができる。寺院由緒等が欠落している。南信地方の蘭渓道隆開山寺院等と関連を現在考察しているが、この地域に点在する文献資料が現在のところ明らかではない。このような事例は新潟県東山寺・正応寺も現在は共に曹洞宗の転宗し、寺院資料が伝来していない状況である。以上、これまでの進捗状況は、調査資料を検討し、整理し、統合化して研究成果を纏めるまでに至らない状況である。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在ようやくコロナウイルスによる行動の制約が緩和されたので、これまで調査を行えなかった山陰地方、東海、関東以北について調査を進めるとともに、これまでの調査成果を総合化し、研究課題を見出すとともに、並行して研究成果を纏めていく。また現在は僧導州となった修禅寺(伊豆市)は中興開山として蘭渓道隆像を伝えている。当時の伊豆守は甲斐守護でもある武田信光で、配流と決まった蘭渓道隆を甲斐国で受け入れた背景について、これまで研究視点として構築されたことはなかったし、おそらく鎌倉時代における守護地頭の領国経営と初期禅宗の定着は、武家政権の揺籃期に関して十分に検討されてこなかった。そのため、研究を進めるにあたっては、寺院建立あるいは再建に関してのパトロンの存在について、寺院の由緒並びに郷土資料等史資料を渉猟し臨地調査を行う予定である。
|
Causes of Carryover |
次年度以降の使用計画として、これまで施行できなかった臨地調査について、蘭渓道隆の足跡を追い各地へ調査を行う。計画としては寺院に関連する美術資料調査、文献資料調査旅費にあてるとともに、その資料データ化、並びに当初から計画していた年次報告書の作成に充てる。
|
Research Products
(2 results)