2019 Fiscal Year Research-status Report
カトリック改革における幻視表現の成立と展開に関する研究
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19K00193
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
宮下 規久朗 神戸大学, 人文学研究科, 教授 (30283849)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 祭壇画 / ネーデルラント絵画 / カラヴァッジョ / 召命 / 宗教改革 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、幻視表現に関連する資料を収集し、とくに聖母の図像と祭壇画の機能について調査した。 2020年3月初旬にはベルギーとドイツに赴き、多くの美術館と教会、図書館を訪れ、初期ネーデルラント絵画から17世紀バロック絵画までの作品と関連資料を調査した。祭壇画と空間、作品と観者との関係について、ヘントのシント・バーフ聖堂にあるファン・エイクの「ヘント祭壇画」、ルーヴェンのシント・ペトルス聖堂にあるディルク・バウツの「聖餐祭壇画」、ケルン大聖堂のシュテファン・ロッホナーの「大聖堂祭壇画」について詳細に調査し、ヘントでは大規模なファン・エイク展も見て、初期ネーデルラント絵画の写実性と聖性について考えることができ、得るものが大きかった。そのほかこの出張では、ケルンの聖母被昇天聖堂で、ゴシック建築とバロック様式の接続の様態を調査し、同地の聖ウルスラ聖堂では膨大な聖遺物と展示空間について、またブリュッセルの聖カタリナ聖堂では黒い聖母の展示と民間信仰について考えることができた。いずれも、像のある空間が信者にいかにして聖なる存在を近くさせうるかという問題にとって示唆的であった。 また、幻視とも関係する「召命」の表現と意味について考察した。とくにカラヴァッジョの《聖マタイの召命》についての諸問題(マタイ問題)をめぐって、宗教改革の争点となった予定説と自由意志との関係から新たな解釈を試み、さらに召命と回心や殉教との関係などについて考えたことを、著書『カラヴァッジョ《聖マタイの召命》』(筑摩書房、2020年2月)にまとめて出版することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
幻視表現と信仰について、祭壇画と空間、召命と宗教改革といった前提の問題にとりかかったところである。
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Strategy for Future Research Activity |
この路線を続け、祭壇画における聖母図像と幻視表現との関係について調査を深め、考察を進めたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス流行により、国内出張が中止されたため。緊急事態解除後、速やかに使用したい。
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