2021 Fiscal Year Research-status Report
カトリック改革における幻視表現の成立と展開に関する研究
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19K00193
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
宮下 規久朗 神戸大学, 人文学研究科, 教授 (30283849)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | カトリック改革 / 聖母図像 / 幻視 / イコン / バロック / ペスト |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、昨年度に引き続き、聖母の主題について研究した。聖母像の起源から現代にいたる表現の歴史を概観し、中でもカトリック改革による聖母イメージの強調と称揚、イコンの再評価、バロック美術における幻視表現の流行、中南米、中国、日本といった非西洋圏への聖母図像の伝播と変容などについて考察した。 聖母の登場する幻視画やエクス・ヴォートを広く収集して分類した。また、ドイツのイエズス会士ヴィルヘルム・グンペンベルクの『アトラス・マリアヌス(マリア地図)』(ミュンヘン、1657年、改訂版1672年)は世界各地のイエズス会士と連絡して調査を協力し、奇蹟的な力をもたらす聖母像が1200例も集められ、その場所や祝日などによって分類された詳細な索引が付されている書物で、これを詳細に検討し、そこからあきらかになる聖母信仰の広がりや聖母イメージの庶民への浸透について考察した。 コロナ禍に関連して14世紀と17世紀にヨーロッパを襲ったペストと美術におけるその影響について、とくにカトリック改革期のヴェネツィア、ボローニャ、ローマ、ナポリなどイタリアの動向について考察し、『学術の動向』などいくつかの媒体に論考を執筆した。 以上の研究の成果は、2021年6月に上梓した単著『聖母の美術全史―信仰を育んだイメージ』(筑摩書房)にまとめることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍によって文献調査はできたが、海外に赴くことができなかったため、作品や一次資料の調査ができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍がなくなり次第、海外調査に行き、必要な作品や資料に当たる。
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Causes of Carryover |
コロナ禍によって、当初予定していた海外調査に行けなくなったため。状況が改善され次第、予定していた海外調査を行う。
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Research Products
(5 results)