2019 Fiscal Year Research-status Report
活人画および活人画的なるものに関する総合的調査研究
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19K00195
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
京谷 啓徳 学習院大学, 文学部, 教授 (70322063)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 活人画 / タブロー・ヴィヴァン / スペクタクル / エフェメラル / 祝祭 / 裸体 |
Outline of Annual Research Achievements |
活人画に関して、もっとも網羅的な視点から編集された近年の先行文献、Julie Ramos (eds.), Le tableau vivant ou l’image performee, Paris 2014を主要な道しるべとし、様々な芸術ジャンルにおける活人画的なるものについて、テクストと記録写真双方における一次資料の収集と整理をおこなった。収集整理は今後も継続し、活人画および活人画的なるものに関するデータ・ベースの構築を目指す。それはいずれ、祝祭史、演劇史、映画史、文学史、音楽史など、様々な分野の研究者による共同研究の土台としての役割も果たすことになるものと思われる。 また、活人画の実践が現実の絵画・彫刻制作といかなる相互的影響関係にあるかについて、ルネサンス美術を中心に考察した。宮廷祝祭で盛んに活人画が執り行われたルネサンス期の壁画等において、画中の建築物に施された彫刻としての人物像が主要場面の出来事に反応を示していたり、あるいは本来無関係であるはずの複数の人物彫像がコミュニケーションをしているかのように描かれていたりする事例を収集・分析し、祝祭や入市式等における活人画実践との関連を精査した。 さらに、演劇やオペラ、ミュージカル等の舞台芸能において、登場人物が静止して活人画をなす、あるいは逆に、舞台上の額縁に入った活人画が動き出す、あるいは額縁から登場人物が出てくるという趣向の事例を収集し、その演出上の効果や、それがその時代の現実の絵画とどのような関連を持っていたかについて検討した。また大衆演劇における活人画的な趣向について、実演の幅広い調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記研究実績の概要に示したように、当初の研究計画に従い、おおむね順調に研究目的が達成された。新型コロナウイルス感染防止の観点より国外調査は中止とし、資料調査に関しては、国内の図書館や研究機関等に所蔵されるものを中心におこなった。 次年度刊行予定の『美学事典』(丸善出版部)のために活人画に関する項目を執筆した。大衆演劇については、西日本新聞に連載記事を執筆した。学会発表としては、地中海学会例会において、「自著を語る――『凱旋門と活人画の風俗史 儚きスペクタクルの力』について」(於学習院大学)と題し、活人画の歴史に関する発表を行った。事典項目執筆、新聞記事執筆、学会発表などを行い、研究成果をしかるべくアウトプットすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
ひきつづき、様々な芸術ジャンルにおける活人画的なるものについて、テクストと記録写真双方における一次資料の収集整理をおこない、データ・ベース構築を目指す。また、当初の研究計画に記載した、文学作品における活人画場面の事例収集に努める。また本年度から引き続き、舞台芸術、映画における活人画的表現の事例を収集し、その意義についての分析を進めていく。それら調査を、ヨーロッパの主要図書館における調査や国内研究機関の調査等により推進する。ただし新型コロナウイルス感染症の流行状況によっては、外国調査は次々年度に回し、そのための経費を次々年度に繰り越す可能性がある。
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Causes of Carryover |
僅少な残額が生じたが、コロナウイルス感染症流行により、使い切るための作業ができなかった。僅少であるため、次年度の支出計画に含めることとする。
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Research Products
(1 results)