2020 Fiscal Year Research-status Report
活人画および活人画的なるものに関する総合的調査研究
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19K00195
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
京谷 啓徳 学習院大学, 文学部, 教授 (70322063)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 活人画 / タブロー・ヴィヴァン |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度より引き続き、活人画実践に関するテクストと記録写真双方における一次資料の収集と整理をおこなった。収集整理は今後も継続し、活人画および活人画的なるものに関するデータ・ベースの完成を目指す。 今年度は、文学作品と活人画の関係についての調査を行った。文学作品において活人画ないし活人画的なものが行われる場面の登場するものは多い。代表的な事例はゲーテ『親和力』とエミール・ゾラ『獲物の分け前』であり、両作品についてはそれなりに活人画との関係についての言及がなされているが、谷崎潤一郎の『金色の死』や江戸川乱歩の『パノラマ島奇譚』等の近代日本の文学作品も含め、東西の事例を広く調査した。文学作品に活人画が登場する場合、単に同時代の風俗として言及されているケースと、小説内における登場人物の立場等が活人画と深く結び付いているケース、小説の構造自体が活人画を参照しているケースのあることが明らかとなった。この論点について、収集した事例を分析することにより、文学作品やそれに取材した演劇や映画作品において活人画が果たした役割についての理解を深めた。 さらに、昨年度より継続して、演劇やオペラ、ミュージカル等の舞台芸能における活人画的趣向の事例を収集した。コロナ禍のため、実地調査は困難であったが、ビデオやDVD等の映像資料を収集し、その演出上の効果や、それがその時代の現実の絵画とどのような関連を持っていたかについて検討した。また大衆演劇における活人画的な趣向についても、DVDによる記録映像を用いて継続的に調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記研究実績の概要に示したように、当初の研究計画に従い、おおむね順調に研究目的が達成された。昨年度同様に、新型コロナウイルス感染防止の観点より国外調査は中止とし、資料調査に関しては、国内の図書館や研究機関等に所蔵されるものを中心におこなった。 次年度刊行予定の『啓蒙思想の百科事典』(丸善出版部)および次々年度刊行予定の『キリスト教文化事典』(丸善出版部)のために活人画に関する項目を執筆した。大衆演劇における活人画的趣向についての研究成果は、文化資源学会における特別講演会および東北大学日本学国際共同大学院における有識者特別講義のかたちで発表を行った。論文執筆には至らなかったものの、事典項目執筆、雑誌記事執筆、学会発表などを行い、研究成果をしかるべくアウトプットすることができたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
ひきつづき、演劇、バレエ、映画など様々な芸術ジャンルにおける活人画的なるものについて、一次資料の収集整理をおこない、データ・ベースの完成を目指す。また、当初の研究計画に記載した、活人画と裸体展示の関係についての調査に努める。とりわけ秦豊吉がプロデュースした帝劇ミュージカルスの舞台における、活人画の趣向を用いた裸体展示についての調査を行いたい。それらの調査を国内研究機関の調査等により推進する。
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Causes of Carryover |
僅少な残額が生じたが、コロナウイルス感染症流行により、使い切るための作業ができなかった。僅少であるため、次年度の支出計画に含めることとする。
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Research Products
(3 results)