2019 Fiscal Year Research-status Report
Comparative study of caricature acceptance of National animation studio: focusing around Estonia
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19K00197
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
有持 旭 近畿大学, 文芸学部, 講師 (30759783)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アニメーション / 風刺画 / エストニア / クロアチア / オーラル・ヒストリー / 比較美術史 |
Outline of Annual Research Achievements |
エストニアとクロアチアにおける国営アニメーションスタジオの風刺画受容を調査する本研究は、エストニアの国営アニメーションスタジオであった「タリンフィルム」とクロアチアの「ザグレブ・フィルム」を軸に調査を行なっている。初年度となる令和1年は、主に文献調査を行なった。タリンフィルムに関しては、まず風刺雑誌『Pikker』に風刺画を描いていたタリンフィルム所属のアニメーション作家をリストアップし分析を行なった。しかし1970年初頭から1990年初頭までおよそ30年間分あるため、そのすべてを時系列に整理するところまで至らなかった。この調査と並行して、タリンフィルム内にヨーニス・フィルムを設立したレイン・ラーマットの自伝本を翻訳している。タリンフィルムでアニメーション製作に招集された画家を把握し、スタジオでの職務や交友関係について明らかにするためである。この文献調査を経て聞き取り調査を行う予定である。ザグレブ・フィルムに関しては、「東欧アニメーション」という枠組みで国内で入手できる概略的な文献を基に調査した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
所有している文献を使った調査は進んでいるが、その成果を基に行う予定であった聞き取り調査ができていない。3月にエストニアでの実地調査を予定していたが、covid-19問題で延期となったためである。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の遅れを取り戻したいが、現状の世界状況では難しいと考える。6月に予定していたザグレブでの調査が白紙となったことが大きい。具体的には①ザグレブ派のヴァトロスラフ・ミミカが2020年2月に亡くなったため、彼への聞き取り調査ができなくなった。②ザグレブ現代美術館で開催中の「ザグレブ・フィルム60周年展」とザグレブ国際アニメーション映画祭での調査ができなくなった。③エストニアで出版されている書籍や定期購読しているエストニアの芸術文化雑誌が1冊も届かない状態である。さらに、研究はオーラル・ヒストリーを軸としているため、海外での実地調査ができない現状のなか研究が大きく進展することは難しい。国内で文献調査を進めていくが、検証まで行うことは困難であろう。研究方法を再考する必要がある。 こうしたことを踏まえ、次年度となる令和2年度は、国内でアニメーション作品と風刺画作品の分析を中心に行う。例えば、ザグレブ・フィルムの歴史が描かれた作品『40 godina u 40 minuta』(1996)やレイン・ラーマット作品『Kilplased』(1974)などである。また、ラーマットの自伝書や風刺画家ヘインツ・ヴァルクの自伝書の翻訳を継続して行う。さらに、インターネットで入手できる資料を積極的に集める。一方で、海外での研究は早くとも12月から3月の間に可能だと想定している。渡航可能となれば、レイン・ラーマットやヘイキ・エルニツら、エストニアの作家に聞き取り調査を行い、資料提供を依頼し、ペレストロイカ(1985)から独立直後(1991)における視覚芸術の状況がタリンフィルムにどう影響を及ぼしていたのか、明らかにする。国営アニメーションスタジオと風刺画の関係に関する初動的研究成果を2021年度の日本映像学会で口頭発表することが目標である。 次年度に海外での実地調査を過度に増えすことはできないため、研究の1年延長を視野に入れている。
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Causes of Carryover |
予定していた海外での調査が延期となり、旅費と人件費に関して計上額と実費の間で差が出た。物品費は海外で購入する予定であった資料費であるから、同様の理由により使用することがなかった。
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