2019 Fiscal Year Research-status Report
関西中国書画碑帖コレクション形成の研究―未公刊資料の分析を中心として―
Project/Area Number |
19K00201
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Research Institution | Sagami Women's University |
Principal Investigator |
下田 章平 相模女子大学, 学芸学部, 講師 (60825826)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 近代東アジア / 書道史 / コレクション / 日中交流 / 書画碑帖 / 犬養木堂 / 鑑定 / 斡旋 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「収蔵集団」を視座とし、未公刊資料の分析を通じて辛亥革命勃発後から戦前までの時期に、関西中国書画碑帖コレクションが形成された要因について解明することを目的とするものである。 2019年度は犬養毅の「収蔵集団」における役割の検討した。木堂は「犬養木堂を中心とする収蔵集団」を統括し、関西を中心とする中国書画碑帖コレクションの形成を主導した人物である。その実態を探るべく、本年度は鷲尾義直編『犬養木堂書簡集』(人文閣、1940)、『新編犬養木堂書簡集』(岡山県郷土文化財団、1992)及び書簡の内容に関わる文献を検討の対象とし、木堂の中国書画碑帖鑑定と斡旋に関して具体的に検討を行った。 木堂の鑑定に関しては、書画碑帖のいずれの鑑定も彼の周囲の賞鑑家の見解を踏まえた上で、原本や影印出版物等の「基準作品」によって鑑定を行い、顔真卿や宋の三大家を尊重し、南宗正統絵画以外の絵画へ対しても着眼している点に独自性があることを明らかになった。また、木堂の顔真卿や宋の三大家の尊重は、顔真卿を起点とし、宋の三大家によって革新的な書風が大成されたとする戦後の神田喜一郎氏の学説に展開する内容を含む点に先進性が認められることや、宋代墨蹟の優品が日本に流入したのは、木堂の書法観(収蔵観)も影響したと見られることを指摘した。 また、斡旋に関しては、小規模なコレクションは木堂が友人に個別に斡旋していたと見られるが、斡旋の難しい大規模で高額なコレクションに関しては、木堂が主導して「犬養木堂を中心とする収蔵集団」によって組織的に斡旋が行われていたことを明らかにした。また、文人的素養がなく、財政的に困窮していない中国人収蔵家の斡旋には応じなかったこと、日本人収蔵家への売り込みや価格設定といった実務は博文堂が担っていたこと、木堂には在中日本人の協力者がいたことも指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は犬養毅の「収蔵集団」における役割について、木堂の鑑定と斡旋の観点から検討を進め、その成果を論文や口頭発表の形で公表することができたため、当該年度の研究は当初の計画通り順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は博文堂の収蔵に関わる活動について検討する。博文堂は「犬養木堂を中心とする収蔵集団」の事務局としての役割を果たしており、賞鑑家と収蔵家を繋ぐ紐帯であった。博文堂の中国書画碑帖の影印出版活動及び長尾雨山・内藤湖南関係の資料を中心に検討し、その活動の実態を解明したいと考えている。しかし、2020年度はコロナ禍の影響でこれらの資料が閲覧できない場合も想定される。その場合は来年度以後に行う予定であった研究対象の検討を先に行いたい。
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Research Products
(3 results)