2020 Fiscal Year Research-status Report
関西中国書画碑帖コレクション形成の研究―未公刊資料の分析を中心として―
Project/Area Number |
19K00201
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Research Institution | Sagami Women's University |
Principal Investigator |
下田 章平 相模女子大学, 学芸学部, 講師 (60825826)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 書道史 / 近代東アジア / コレクション / 日中交流 / 書画 / 碑帖 / 犬養木堂(毅) / 山本二峯(悌二郎) |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「収蔵集団」を視座とし、未公刊資料の分析を通じて辛亥革命勃発後から戦前までの時期に、関西中国書画碑帖コレクションが形成された要因について解明することを目的とするものである。 2020年度は山本二峯(1870-1937)の収蔵の検討を行った。二峯の名は悌二郎、新潟県出身の実業家・政治家であり、山本悌二郎『澄懐堂書画目録』(文求堂、1932)には二峯の中国書画コレクション1176件が記載され、その数量及び全時代の書画を網羅的に蒐集していた点においては、当時の書画碑帖収蔵家の代表格として挙げることができる。これまで検討の対象とされてこなかった関西大学図書館内藤文庫所蔵内藤湖南(1966-1934)宛二峯書簡を分析の対象とし、二峯の収蔵における交友関係、収蔵観、文物コレクションの実相について検討した。検討の結果、二峯は収蔵における交友関係の中で昭和初期に湖南、長尾雨山(1864-1942)、羅振玉(1866-1940)を重視し、特に湖南に関しては、二峯は湖南と漢詩の応酬や添削を受け、文物の鑑定を依頼する一方で、湖南の学究活動を支えていたことが明らかとなった。また、二峯は網羅的・系統的な書画の収集を行う一方で、新渡の宋元画を積極的に収蔵して「宝宋堂」と号し、宋元画の価値判断が分かれる時期にあって、湖南の「南北宗論」を尊重した鑑定だけに依拠するのではなく、自らの審美眼によってその再評価を試みたものと判断した。そして、二峯には刀剣・書画・文房具以外にも金石・印章・漢籍・琴のコレクションがあり、その一部は書道博物館を設立した中村不折(1866-1943)コレクションに吸収されたことが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は犬養毅の「収蔵集団」における役割の検討、2020年度は主に山本二峯の収蔵の検討を行った。2020年度は、当初博文堂の事務局としての活動を検討する予定であったが、年度途中で博文堂の収蔵関係資料が多く存在することが判明したため、博文堂の研究は来年度以後も継続検討することとした。当該年度の当初の研究計画とは異なるが、研究自体はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は博文堂の収蔵に関わる活動を継続検討しつつ、中国人収蔵関係者(羅振玉・廉泉・白堅など)について検討する予定である。 しかし、2021年度もコロナ禍の影響で当該資料の調査・研究ができない場合も想定される。その場合は次年度以後に行う予定であった研究対象の検討を先に行いたい。
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