2023 Fiscal Year Annual Research Report
関西中国書画碑帖コレクション形成の研究―未公刊資料の分析を中心として―
Project/Area Number |
19K00201
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Research Institution | Sagami Women's University |
Principal Investigator |
下田 章平 相模女子大学, 学芸学部, 准教授 (60825826)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 大西見山 / 羅振玉 / 長尾雨山 / 内藤湖南 / 黒木欽堂 / 文求堂 / 寸紅堂 / 博文堂 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、博文堂関連資料によって、大西見山(1870-1930)をとりまく書画碑帖の売買及び鑑定をめぐる交友関係について検討し、大西見山の書画碑帖収蔵ネットワーク及び近代書画碑帖収蔵史の第2期(辛亥革命から第2次世界大戦終了までの時期)における書画碑帖の日本への複層的な流入経路について明らかにした。 前者については、大西見山が初期羅振玉(1866-1940)コレクションによって書画碑帖の鑑識眼を養い、方若『校碑随筆』に見られる先駆的な知見や羅振玉、長尾雨山(1864-1942)、内藤湖南(1866-1934)といった鑑定家の意見に基づいて、中国の書画碑帖コレクションを形成したことが明らかとなった。また、明治45年(1912)以後は博文堂を出入り業者として優遇したために、『書苑』誌を創刊した黒木欽堂(1866-1923)や文求堂(寸紅堂)との関係には一定の距離を保っていたことが判明した。 後者に関しては、明治44年(1911)の京都避居に伴い、日本に大量の文物を持ち込んだ羅振玉によって、日本における中国書画碑帖の市場が本格的に開かれたことが判明した。この市場がこれから拡大が見込まれる新規開拓分野と目されたために多くの業者が参入したが、大正中葉を過ぎると、中国書画碑帖の優品を扱う業者は、少数の業者によって寡占されていく状況が明らかとなった。すなわち、いずれも羅振玉と交友関係にあった文求堂(寸紅堂)と博文堂であり、顧客獲得を巡って熾烈な販売合戦が繰り広げられたことが明らかとなった。
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