2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K00202
|
Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
神田 雅章 龍谷大学, 文学部, 教授 (80241503)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 磨崖仏 / 石窟 / 石仏 / 山林仏教 |
Outline of Annual Research Achievements |
実態把握のための現地調査を中心に行った。調査箇所は福島県2箇所(薬師堂石仏・観音堂石仏)、富山県1箇所(日石寺磨崖仏)、奈良県1箇所(宇智川磨崖碑)、大分県10箇所(臼杵磨崖仏・緒方宮迫東石仏・緒方宮迫西石仏・菅尾磨崖仏・高瀬石仏・大分元町石仏・熊野磨崖仏・岩屋寺石仏・犬飼石仏・曲石仏)で、大分県では、瑞巌寺磨崖仏・伽藍石仏・倉成磨崖仏・鍋山磨崖仏・普光寺磨崖仏などの中世以降の磨崖仏についても参考として調査対象とした。本研究は、重要文化財指定以外の古代の磨崖仏を主な対象とするものだが、当該年度は地域差や時代差を確認する目的で、周辺に所在する重要文化財指定を受けるものや、中世以降のものも含めて簡単な調査を行った。 調査内容は箇所によって異なるが、写真記録と、形状、彩色の有無、保存状態、目視による石質劣化の状況、カビや苔・地衣類の状況、覆屋などの保存設備、保存施設の有無、可能な場所については温湿度・照度の計測である。多くは覆屋が建設されるなど整備が進み、環境調査も行われ、中にはすでに修復を終えている箇所もあった。全体的に見て近畿圏において保存対策に遅れがみられる。ただし保存対策とその効果についてはケースバイケースで容易には判断できないことも確認された。 現地調査と合わせ、一部の摩崖仏については文献収集や過去の写真、拓本資料の確認を行った。宇智川磨崖碑については近世以降の碑文の採字記録と過去に採取された拓本や写真を照合し、文字や線刻仏の劣化状況について調べ、段階的に剥落が進行していることを確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3D計測や継続的な環境調査については、実施予定箇所を見直し再度調査対象を選定する必要が生じたため、着手には至らなかった。一箇所を重点的に行う調査はできなかったが、それに代わり、広く現況を調査する方向に切りかえ、調査対象を広げることにより、当該年度でほぼ大きな傾向をつかむことができた。また、現在自治体や研究機関によって継続的に環境調査を実施している箇所も多く、進んでいないのは近畿圏に多いことから、このような実態を踏まえて今後、調査対象を絞り込むこととする。
|
Strategy for Future Research Activity |
保存修理や環境調査が行われておらず、劣化が進行している磨崖仏2箇所ほどを選び、3D計測等の詳細な現況調査を行い、今後、保存対策を講じていくための基礎資料を整備する。 また環境調査については可能な範囲で行うが、短期間に簡略な計測等を行っても成果は期待できないことからあくまで参考程度とし、過去の保存の記録や写真、拓本等の資料の確認調査に重点を置いて、全体的な状況把握を進めていくこととする。
|
Causes of Carryover |
予定していた3D計測調査について、調整がつかず調査地選定を改めて行う必要が生じ当該年度で実施できなったため、次年度使用額が生じた。その分を次年度予定分の基礎的な実態調査に充てたので、次年度においては3D計測を2箇所実施することで全体として予定通り執行する計画である。
|