2023 Fiscal Year Annual Research Report
Expansion and succession of Perugino style in Renaissance Italy
Project/Area Number |
19K00204
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
伊藤 拓真 九州大学, 人文科学研究院, 准教授 (80610823)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ルネサンス美術 / フィレンツェ / ローマ / ウンブリア地方 / ペルジーノ / 芸術地理 / 地方様式 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、研究実施期間延長後の最終年度として、研究期間全体の研究成果をとりまとめるとともに、新型コロナウイルス感染症の影響により実施することができなかった作品調査を行った。 2023年9月から11月には、在フィレンツェ・オランダ大学連合美術史研究所(NIKI)に、スカラー・イン・レジデンスとして滞在し、同研究所の文献資料を活用した調査を行うとともに、フィレンツェおよび関連地域の作品および関連資料の調査を集中的に行うことができた。調査の対象としては、フィレンツェの文化財管理局や修復研究所が管理する諸施設のほか、パリ・ルーヴル美術館およびそのドキュメント・センター、ペルージャ、フォリーニョなどウンブリア地方各地やセニガリアなどにも及ぶ。これらの調査を通じて、フィレンツェやローマにおいて名声を確立した画家が、いわゆる地方都市の画家たちに対してどのような影響を及ぼしたかを確認することができた。また滞在中は、NIKIの主催する講演会などを通じて、現地の研究者との意見交換を行うこともできた。 上記の研究活動を通じて、1500年前後のイタリアにおいて、ペルジーノは中部イタリア全域にわたる評価を獲得したが、その受容は地方ごとに大きく異なることを確認した。従来の観点においては、ペルジーノの存在はフィレンツェにおけるルネサンス絵画の展開の枠組みで語られるが、フィレンツェ以外の地におけるペルジーノ受容・評価を確認することで、その構図を多面的に捉えなおすことが可能となった。 具体的な研究成果としては、昨年度に既に脱稿していた『地中海学会』掲載論文が発行されたほか、『デ・アルテ』誌に研究動向を投稿(査読・受理済)している。この論考においては、昨年度末にイタリアで開催されたペルジーノ展の成果を、近年の芸術地理的動向との関係から読み解いた。
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