2023 Fiscal Year Annual Research Report
Early 17th century Roman religious paintings and ordinary people
Project/Area Number |
19K00206
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
浦上 雅司 福岡大学, 人文学部, 教授 (60185080)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 17世紀ローマ美術 / 近世絵画と市場 / 画家と受容層 / 庶民と美術 / ローマ美術界 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は1)17世紀ローマにおける美術市場の実態を入手可能な資料に基づいて多角的に考察すること、2)当時のローマにおける美術作品蒐集の実態、特に、貴族や大商人など富裕層以外の社会的階層(庶民)の生活に絵画などの美術どの程度まで浸透していたかを解明すること、3)ローマに暮らす庶民が美術と接する機会がどの程度あり、どれほど積極的に関与していたか、具体的な事例を調査すること、の三点だった。 本研究の事業期間は当初、令和元年度から令和3年度だったが、令和2年度から3年度にかけてコロナ禍に襲われ当初予定していたローマなど海外での現地調査は行えなかった。この間、文献調査と国内調査によって進められ、これに研究費を費やしたため、研究機関が延長された令和4年度、5年度も福岡で入手できる文献やインターネットのデータベースによって研究を進めることになった。 この機会を活用し、R.AgoやP.Cavazziniなどイタリアの研究者やR.E.SpearやC.Robertsonなど英語圏の研究者の研究成果を,同時代資料を参照しながらより深く考察するだけでなく、ドイツ語圏の「美術と鑑賞者の関係」研究も検討できたのは貴重だった。 令和4年度から、BaetschmannやW.Kemp、T.Frangenburgなどの重要な研究を時間をかけて検討し、新しい視点から17世紀ローマ美術界を考察することに重点をおいた。当時のローマにはオランダやドイツからも多くの画家たちが活動しており、彼らのローマにおける生活や活動についてはドイツ語文献が基本的な資料なのである。 令和5年度も、同様に、ドイツ語圏の美術家たちのローマ活動活動という側面からの調査を進め、17世紀ローマにおける庶民と美術の関係を、ローマやイタリアにとどまらない、17世紀の西欧における美術状況の中に位置づけて解明することができた。
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