2021 Fiscal Year Research-status Report
金属製幡の基礎的研究-特に密教における灌頂道具としての用途と機能
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19K00207
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Research Institution | Tokyo National Museum |
Principal Investigator |
伊藤 信二 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸企画部, 課長 (00443622)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 金属製幡 / 玉幡 / 金銅幡 / 灌頂道具 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度は前年度に引き続き、本研究対象である金属製幡(玉幡)、およびそれを含む密教の灌頂道具や法具について、過去に調査実績のある作品を中心とする実験調査、およびそのデータ整理を行うとともに、未調査の作品について情報を収集した。実見調査は以下の通りである。 【千葉・宝金剛寺蔵品】以前に調査を実施していた宝永2(1705)の年記を有する玉幡一対はじめ、元和6(1620)の年記を有する宝冠一対、玉幡・金銅幡各一対、竜頭一対、説相箱一対、如意一柄など灌頂に関わると推測される道具類のほか、華鬘などの荘厳具を調査した。【大阪・観心寺蔵品】箱書に文明15(1483)の年記がある玉幡・竜頭・竿各一対、宝冠3頭など灌頂に関わる道具ほか、独鈷杵・五鈷杵・五鈷鈴・四けつなど密教法具類を調査した。玉幡自体は箱書より時代が下がる可能性もあるが、稀少な中世玉幡の遺例であることが確認された。【京都・縁城寺蔵品】以前に調査を実施していた宝冠、法螺の灌頂道具を調査するとともに、未見であった紅白五輪塔、柄香炉など灌頂に関わり深い道具類や、十二天画像、敷曼荼羅などを調査した。この調査において、従来未紹介の玉幡・竜頭一対(丹後峰山藩4代藩主京極高之寄進 1678-1723)が見いだされた。【奈良・法隆寺蔵品】東京国立博物館における特別展「聖徳太子と法隆寺」において同寺所蔵の玉幡一対が出陳された機会をとらえ実見調査を行った。本幡については密教の灌頂でなく荘厳具としての玉幡の機能も想定される。 このほか山形・慈光明院や個人に玉幡、金銅幡が伝来している情報を得、本格調査に先立つ事前下見を実施した。 今回の調査において、玉幡が真言密教の灌頂道具であったことをより明確に位置付けることができた。また各地の真言寺院における灌頂道具の伝来は、日本の各地域において有力寺院が灌頂を行っていたことを推測せしめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度に引き続き新型コロナウィルス感染症の拡大にともない、移動や人的接触において感染症対策を徹底することが求められたため、感染状況を見ながら調査の日時設定を行うなど、調査における制限があった。 また令和3年1月から3月にかけ検査および入院手術を行い、以後も定期的な検診を受ける必要があるなど、自身の体調においても万全とはいえない状況であった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、当初計画しており未だ実施していない作例の実見調査を引き続き行うとともに、品質・形状・法量などの基礎データと画像データの整理を行う。調査にあたっては、新型コロナウィルス感染症の拡大状況を考慮しながら、万全の感染対策を講じた上で実施する。 調査の最終年度として調査データを集積・整理し総括する。
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Causes of Carryover |
前年度に引き続き新型コロナウィルス感染症の拡大にともない、移動や人的接触において感染症対策を徹底することが求められたため、感染状況を見ながら調査の日時設定を行なわざるを得なかった。また令和3年1月から3月にかけ検査および入院手術を行い、以後も定期的な検診を受ける必要があるなど、自身の体調においても万全とはいえない状況であった。以上の事由から計画していた所定の調査等が実施できなかった。 今年度は最終年度にあたるため、予定していながら実見調査できていない作例の調査を行う。調査にあたっての移動費・宿泊費、作品の移動や簡易梱包をともなう調査補助にかかる作業員経費、最終的な総括のためのデータ整理費、印刷費等の支出を想定している。
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