2019 Fiscal Year Research-status Report
白描図像の分析から帰納する仏画研究―玄証本を起点に―
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19K00210
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Research Institution | The Museum Yamato Bunkakan |
Principal Investigator |
古川 攝一 公益財団法人大和文華館, その他部局等, 学芸部員 (70463297)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 白描図像 / 仏教絵画 / 図像学 / 玄証本 / 美術史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、平安時代後半から鎌倉時代前半に集積された白描図像が、院政期以降の仏画制作にどのような影響を与えたのか、その解明を試みるものである。研究初年度にあたる当該年度は、研究の糸口である、高野山で図像の収集活動を行った、玄証(1146~1222)ゆかりの図像である玄証本図像について、これまで代表者が調査を行った作例を中心に、①主題②表現[描線の質、造形、彩色の有無]③文字情報[制作年代、人物名、註記]の整理・分析を行い、あわせて各美術館・博物館が発行した所蔵品目録や展覧会図録に見られる玄証本について情報収集を行った。 作品調査では、展覧会に出陳された白描図像及び平安・鎌倉時代に制作された仏画作例について、可能な限り実見した。幸い東京国立博物館で開催された「特別展 国宝東寺ー空海と仏像曼荼羅」など、白描図像や仏画の優品が出陳される機会に恵まれた。このほか海外調査を行う機会も得られ、米国・クリーブランド美術館に所蔵される白描図像「仁王経曼荼羅」「勢多迦童子図像」や、「薬師十二神将像」「文殊菩薩像」をはじめとした中世仏画について調査を行った。数多くの白描図像を実見したことで、情報の制限された白描図像における、描線、墨色、紙質、紙色などの情報を得る貴重な機会となった。 さらに、白描図像に描かれた動物表現について研究発表を行う機会があり(奈良国立博物館第48回夏期講座「仏教美術にみる動物のすがた」)、本研究に関わる成果の一端を発信することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
海外調査の機会にも恵まれ、初年度から本研究に関わる作品について積極的に調査、実見を行うことが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
玄証本図像について、売立目録も視野に入れた幅の広い情報収集を行っていく。白描図像は近代以降、断簡となって諸家に分蔵されたものも多く、売立目録に掲載された図像について情報収集を行い、広範な視点で玄証本の分析を行っていく。また、白描図像と密接な関わりのある仏画作例についても積極的に情報収集を行い、調査研究を進める。
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Causes of Carryover |
(理由)新型コロナウイルス感染拡大の影響により、年度末に予定していた出張を取り止めたため。 (使用計画)次年度も新型コロナウイルスの影響は避けられないが、収束次第延期していた出張を行うほか、前年度に海外出張を行ったために、購入を見送った物品費に充当することで使用可能と考える。
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