2022 Fiscal Year Annual Research Report
白描図像の分析から帰納する仏画研究―玄証本を起点に―
Project/Area Number |
19K00210
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Research Institution | Tokyo National Museum |
Principal Investigator |
古川 攝一 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸研究部, 研究員 (70463297)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 白描図像 / 仏教絵画 / 白描画 / 図像学 / 玄証本 / 美術史 / 模本 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は平安時代後半から鎌倉時代に数多く制作され、主要な密教寺院や、天皇・摂関家が造営した寺院に付属する宝蔵に集積された白描図像が、院政期以降の仏画制作にどのような影響を与えたのか、現存作例に即して考察するものである。最終年度にあたる本年は、研究の取りまとめを意識しつつも、新型コロナウイルス感染拡大の影響で延期せざるを得なかった調査を行うことができ、具体的な作例に即した考察も行うことができた。例えば、香雪美術館に所蔵される玄証本「毘沙門天図像」「証入曼荼羅図像」「不動明王二童子図像」などの作品調査、中之島香雪美術館(「来迎」)、奈良国立博物館(「大安寺のすべて」「中将姫と當麻曼荼羅」)など、本研究に関わる展覧会調査も行うことができた。 本年度の実績・成果で注目されるのが、白描図像の近代模本を活用した研究である。研究代表者が所属する東京国立博物館所蔵「阿弥陀鉤召図(模本)」は、法隆寺金堂壁画を模写したことが知られる桜井香雲が描いた作例である。原本は高山寺伝来の鎌倉時代の作例とみられるが、中之島香雪美術館に所蔵される同一作例の模本との比較により、東京国立博物館所蔵の模本は、法隆寺に所蔵される江戸時代に制作された「阿弥陀鉤召図」の模本である可能性を指摘した。近代の模本を活用した古代・中世の白描図像研究は、模本制作時の原本の状況を知ることができる格好の資料であり、今後も活用を試みたい。こうした成果は、展覧会図録や連続講座で広く一般に公開することができた。
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Research Products
(4 results)