2023 Fiscal Year Research-status Report
無形の文化財(芸能)の保護と活用に資する博物館的施設に関する研究
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19K00211
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
角 美弥子 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (50569829)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 無形の文化財 / 民俗芸能 / 博物館展示 / 文化財の保存継承 / 文化財の活用 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度も引き続き各地の博物館施設における芸能に関する展示状況について調査を進めた。各地方自治体における総合的な博物館では、主に歴史・民俗・自然を取り扱っている施設が多いが、どこに重点を置いているかはそれぞれの博物館または自治体の意向によるもので、必ずしも民俗芸能、また民俗を取り扱っているわけではないことが判明した。博物館施設は観光にも活用されるため、自治体内でもインパクトの強い文化や文化財を押し出すことも多く、例えば地域の中心となる城や遺跡がメインの展示の館も多くあり、実際の展示の調査もさることながら各博物館施設の設置条例も併せて確認する必要性が認められた。 芸能に関する展示はより小さな地域つまりひとつの芸能の存在が認められる地域の中で行われており、専門的な施設も芸能をアピールし観光に活用する側面と地域内での周知と保存継承の側面がある。また専門的な施設では上演も可能な施設が多くみられたが、地域が特定される場合も多く、いわゆる観光地から離れているため自家用車以外でのアクセスが難しいことや、来館者が少ないために休館日が多い施設も見られた。加えて、地域の芸能に特化した施設は地方公共団体の直営ではなく、公共的団体として管理を受託しているものがあり、管理運営者の違いによる展示の違いについても検討する必要がある。 ほかには芸能に関する言及はなくともイベント企画として芸能を周知したり、芸能そのものではなくとも産業に関連するものとして芸能の展示を行うなど、それぞれの施設に応じた展示方法を行っている、また行えるという知見を得た。また市町村レベルでは、合併後の名称を掲げても、合併以前の展示を踏襲しがちで、合併後の地域のフォローが十分でないことがあり、今後の課題となっていることも判明した。 今後は集積したデータをもとに、管理運営も含めて芸能に関する展示について分析を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
前年度(2022年度)まではまだコロナの影響があり、自治体へのアクセスを控えるよう求められたり、施設の休館が多くあったが、8割がた通常営業に戻り、ようやく現地調査を進められるようになった。一方で今回改めて「芸能の展示」という視点を持つに至り、各地に出張や私事で出向く折に研究計画時には見えていなかった、キーワードである「芸能」「展示」「施設」では探しきれない各地での小さな展示施設、展示方法に気づくことになり、調査範囲が広がり、その整理に追われて時間を費やしてしまった。加えて、自己都合ではあるが当該年度から家人の介護の要があったため、まとまって研究に取り組む環境を整えることが難しかったこともある。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度(2024年度)は最終年度として集積したデータをもとに傾向を分析し、学会発表及び論文発表を目標とする。分析の際に改めてデータ項目を整理し、データベースを作成して今後の研究に有用な状態とする。分析の項目は施設の性格と展示物、展示方法、活用状況そのほか付随する要素とし、今回の研究としては芸能に関する展示の在り方についてまとめることで成果とする。なお、一部の未調査施設及び特別展については年度の前半に現地にて確認を行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響で現地調査等が不十分だったため研究期間を延長し、次年度を最終年度として使用することとした。 一部の調査費用と、論文作成用の消耗品費として使用を予定している。
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