2021 Fiscal Year Research-status Report
舞台芸術活動における聴覚障害者アクセシビリティ向上に向けた舞台手話通訳分析研究
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19K00214
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Research Institution | Tsukuba University of Technology |
Principal Investigator |
萩原 彩子 筑波技術大学, 障害者高等教育研究支援センター, 助教 (30455943)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 舞台芸術 / 手話通訳 / アクセシビリティ / 聴覚障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究1として計画していた「模擬手話通訳」について、舞台手話通訳経験者2名に関する撮影を行い、映像ならびにインタビューの分析を行った。 「模擬手話通訳」の撮影では、以前作成した、題材となる舞台演劇映像の中から、これまでの研究により明らかになっている、舞台手話通訳特有の技術が求められるシーンを3つ抜き出し、それについて模擬手話通訳を行ってもらい、撮影した。さらに撮影後、表現の工夫点や苦労した点などについてインタビューを実施した。 これからの映像の分析はまだ継続中であるが、特に劇中で使われる台詞の翻訳について困難を抱えている点がみられ、ろう当事者による手話監修の必要性が指摘されたり、役者の演技から感情を的確に捉え、手話表現に反映させることの難しさなどが語られた。 その他にも、「観客の視線の誘導」に関する捉え方が手話通訳者によって異なる点が見受けられ、舞台上と手話通訳に注目させる「バランス」の取り方に関する基準が明確でないことがわかってきている。その他にも、演劇だからこそ生じる「話者の明確化」の難しさについて、ロールシフトによる方法だけでなく、役のキャラクターに合った語彙の選択と表現に積極的にトライする様子が見られるなど、苦労しながらもさまざまな手法により実現しようとしている様子が見られた。 今後も分析を進め、これまでの研究結果と照らし合わせながら、舞台手話通訳に特化した技術について明らかにするとともに、これから舞台手話通訳を目指す手話通訳者にとって習得に困難を抱えやすい課題点について検討を行っていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
模擬手話通訳の撮影は多少計画より遅れているものの、分析のほうがスムーズに進んでおり、トータルとしては「おおむね順調に進展している」と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
模擬手話通訳の撮影を継続し、予定人数を終了させるとともに、模擬手話通訳映像ならびにインタビュー映像の分析をそれぞれ進める。 模擬手話通訳は、映像解析のソフトウェアを使って用いられた手話表現やその他のテクニックを細かく分析していく。 インタビュー映像については、文字起こしを行ったのち、対象群ごとに分析し、群内の傾向の分析ならびに群間の比較などを行っていく。 これらにより、舞台手話通訳に特化した技術についてさらに明らかにするとともに、これから舞台手話通訳を目指す手話通訳者にとって習得に困難を抱えやすい課題点についてまとめる。
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Causes of Carryover |
模擬手話通訳の撮影について、たまたま同地域で協力者が見つかり、1度の出張で撮影ができ、結果的に節約となった点がある。まだ模擬手話通訳の撮影は残っており、どの地域での撮影になるかわからないため、次年度の旅費として使用予定である。 その他には、同じく次年度に行う模擬手話通訳撮影後のインタビューの文字起こし委託料として使用予定である。
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