2019 Fiscal Year Research-status Report
美術館における社会的課題を踏まえた子ども対象のアート・プロジェクトのモデル化
Project/Area Number |
19K00215
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
神野 真吾 千葉大学, 教育学部, 准教授 (90431733)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 真帆 千葉大学, 教育学部, 准教授 (30710298)
縣 拓充 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 助教 (90723057)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | アート・プロジェクト / 子どもの社会参加 / V&A子どもミュージアム / ソーシャリィ・エンゲージド・アート / 現代アート / 美術教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の主な活動として、研究テーマに関する調査として、イギリス、ロンドンのヴィクトリア&アルバート・子どもミュージアム(以下V&A)に赴き、担当学芸員と様々な意見交換を行うと共に、資料収集を行いました。 イースト・ロンドンにあるV&Aは、その地域の住民が移民等をはじめとする低所得者層が占める割合が高く、その場所へのミュージアム建設もまた、地域住民への文化的な啓蒙が目的の一つであったため、そこで取り組まれるプログラムは、地域やそこに住む子どもたちの課題が念頭に置かれ企画されています。アートをはじめとする文化コンテンツを、知識として与えるという旧来のミュージアムの取り組みとは異なり、地域の課題が活動を考える上で最も重要視されているというのが大いに参考になりました。これはソーシャリィ・エンゲージド・アートの問題意識と重なるものであり、アート業界での評価などをあまり意識しておらず、教育を主たる目的としている点では、より純粋に社会的課題をアートを通して解決、あるいは問題を緩和する取り組みであると評価することができると考えています。これは、日本における普通教育における美術/アートと、美術館における教育活動の乖離を考える上でとても参考になる事例であり、本研究のテーマに即したプログラム立案にもとても重要な視座を与えてくれました。 また、テート美術館が2016年から取り組んでいるテート・エクスチェンジについても合わせてリサーチすることが出来た。社会・コミュニティとアートの関係を実験的に実践するこのプログラムは、大人を対象とすることが中心だが、プログラムが社会的課題を踏まえて組まれている点で大いに参考になった。 共同研究者とも、上記成果をシェアし、議論を深め、今年度の研究に入る準備が出来ました。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通り所期の調査を終えることが出来、二年後に予定されているシンポジウムへの参加についての打ち合わせをすることもできた。 ただし本年度については、コロナウィルスの影響もあり、子どもを対象としたワークショップを行うことが出来るかどうか不透明である点が危惧される。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度は、昨年度の調査を踏まえ、子どもを対象としたアート・プロジェクトを実際に行うこととしていますが、新型コロナウィルスの影響の中、美術館や学校との打ち合わせや依頼が出来ない状況が続いているのが実情です。学校が再開したとしても、休校期間が長かったためスケジュールに余裕のない学校現場の協力が得られるかどうか、大変厳しい状況が予想されます。状況が改善した場合に実施が出来るよう、準備も並行して進めてはいますが、場合によっては、3年目に、プロジェクトの実施と総括シンポジウムを併せて行うことを検討する必要も感じています。
|
Causes of Carryover |
次年度(2020年度)に行うプログラムの内容について完全に固められないため、無駄な執行とならないよう、実施内容を実施年度に固め、当初初年度(2019年度)に必要機材等を購入する予定の金額を、次年度に繰り越すこととした。
|