2023 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19K00221
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
河添 達也 島根大学, 学術研究院教育学系, 教授 (20273914)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 作曲 / 管弦楽法 / 楽曲分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
現代日本を代表する作曲家 湯浅譲二(1929-)と細川俊夫(1955-)の作品および音楽思考の研究を通して、彼らの日本伝統音楽受容の実態を明らかにする試みが、本研究の全体構想である。なかでも、作品の管弦楽法を作曲技法の観点から分析することに主軸を置き、音響化の具体的事象を明らかにする点にも特徴がある。 ただ、昨年度も記した通り、2020年度末以降、コロナ禍による演奏会の自粛要請等により、予定していた海外での事例研究や専門家の招聘等を見送らざるをえなくなったことから、これまでに入手した楽譜を研究素材とする譜面上の楽曲分析研究へとその主眼を切り替えた。また、2023年度は研究対象者の湯浅の体調不良が伝えられたため、もう一人の研究対象者である細川俊夫の、管弦楽作品と器楽の再創作(編曲)作品を中心に、実演と作曲者本人へのインタビューを通して、管弦楽法の特徴に関する分析を試みた。 具体的には、昨年度に続いて細川俊夫の管弦楽作編曲楽曲「さくら」を、筆者の指揮による「島根大学管弦楽団定期演奏会」(2023年11月25日)において取り上げ、その研究成果を公表した。この作品は、初演のバンベルク交響楽団を始め、すでに数多くの団体によって演奏されているが、公式な録音音源の公開や販売はまだない。そこで、細川本人から、海外のオーケストラによる演奏音源の提供を受け、特に、日本伝統音楽の特徴を生かした管弦楽法に関する表現方法の違いなどを確認することができた。細川本人にも、本作品の管弦楽法に関するインタビューを行い、その特異な手法の一端を明らかにすることができたが、この成果については、2024年度の査読誌に公表する予定である。 また、細川のマリンバ独奏作品の二重奏版への編曲手法を、実演を通して確認するとともに、研究者自身の作品も同日の演奏会で発表し、これらの音響創作上の対比を、広く一般聴衆へ公表した。
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