2019 Fiscal Year Research-status Report
中空構造を持つ立体造形物の基礎研究と彫刻表現の実践
Project/Area Number |
19K00224
|
Research Institution | Kanazawa College of Art |
Principal Investigator |
芝山 昌也 金沢美術工芸大学, 美術工芸学部, 准教授 (90435222)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | つくりもの / 籠細工 / 近代日本彫刻 / 地域芸術祭 / 立体造形 / 彫刻 / アートプロジェクト |
Outline of Annual Research Achievements |
1年目の研究・研究発表の内容は大きく分けて以下の3項目である。 (1)全国の祭礼にみられる立体造形物の現況を調査し画像での記録を行った。今年度は江戸時代に生人形制作者を多く輩出した九州地方の調査が中心となった。調査を行ったのは宇土地蔵祭り(熊本県)、火伏地蔵祭り(熊本県)、八朔祭(熊本県)、塚脇地蔵講(大分県)である。その他、大阪せともの祭りの調査も行った。事前の資料調査と現況を比較し、立体造形物のモチーフの多くが現代のキャラクターになっていることがわかった。祭礼の際に作られる造形物のモチーフは古くからその年の流行り物がベースとなっている場合が多く、その傾向は今日まで継承されている。また、八朔祭の「大作り物」の制作途中経過を視察できたことは、造形物の素材や工法、構造を知るうえで重要であった。次年度以降、事例調査を重ねてより多くのデータを収集に努めたい。 (2)中空構造をもつ立体造形物についての文献調査を進めた。特に生人形や籠細工の考察は見世物学会学会誌『見世物』を中心に多くの論考を参照することができた。しかし、祭礼の立体造形物においては研究対象となっている例が少なく、さらに調査を継続する必要がある。作り手の匿名性、素材が安価な工業製品に変わっている場合が多いこと、モチーフがキャラクター中心となっていること、などが先行研究の少ない要因のひとつになっていると考えられる。次年度以降は、各地の郷土資料を中心に調査し、より実証的な考察を行えるように継続調査していく。 (3)作品制作発表では、中空構造をもつ籠細工を活用した作品を、地域アートプロジェクト「美作三湯芸術温度2019」で発表した。籠細工の野外展示にみられた一時的な野外造形物が、恒久性が前提となっている現代の彫刻の可能性を拡大することができるかどうか検証した。また関連する展覧会等の視察を行い、先進的な立体表現について検証を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全国の祭礼の現地調査は順調に進めることができ、次年度に調査を予定していた現地調査についても進めることができた。現地調査で集めた資料の整理、分析はやや遅れているので次年度の現地調査結果と重ねて進めていきたい。また、文献調査では予定していた2回の国立国会図書館での調査が行えず、祭礼の当地の郷土資料の調査がやや遅れているが、全体の研究の進行状況としては順調に進めることができている。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度の現地調査については、8月9月に開催される予定の祭礼がコロナウイルスの影響を受けて中止されることが大いに予想される。計画当初に予定していた祭礼の造形物の制作現場への視察は変更せざるを得ないが、できる範囲で現地調査を進め中空構造の立体造形物の系統立てについての調査研究を進めたい。また中空構造を持つ作品制作と発表に関しては、2021年度に大規模な野外立体造形作品を発表する予定で、その発表に向けてのテストピース制作や模型制作を中心に研究を進める。また、来年度中に美術館やギャラリーなど室内空間での成果発表も予定している。次年度はコロナウイルスの影響で流動的な要素も多く、当初研究計画の順番を入れ替えるなど全体の研究計画を組み直す必要があることを想定している。
|
Causes of Carryover |
本年度はコロナウイルスの影響により出張を自粛したために2回の文献調査を実施することができなかった。そのために出張費が次年度に繰り越された。
|