2021 Fiscal Year Research-status Report
中空構造を持つ立体造形物の基礎研究と彫刻表現の実践
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19K00224
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Research Institution | Kanazawa College of Art |
Principal Investigator |
芝山 昌也 金沢美術工芸大学, 美術工芸学部, 准教授 (90435222)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 彫刻 / 立体造形 / 祭礼の立体造形 / 近代日本彫刻 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、九州の祭礼における立体造形物の調査研究を基盤にして、それらの構造に着目した立体造形作品を制作することが中核である。しかしながら、本研究3年目においても、感染症対策のため全国の祭礼の実施状況は改善されず、また本務校の研究出張方針によっても現地調査の予定が立たなかった。したがって、研究全体の進行が滞っている。 今年度は制作研究に重点を置くことになった。祭礼の現地調査の実施が進まないことは制作研究にも影響を及ぼしているが、範囲を拡大することで研究を進めた。中空構造の基本的な骨組みや木組みの研究は進んでおり、様々な線材による構造体の実験的制作研究も進めている。実際に研究1年目は竹材、研究2年目は鉄材を使用した作品を発表した。今年度はステンレス・スチール材の溶接による構造体の制作研究を進め、ステンレス材の曲げ工法を行いながら多様な構造体を形作ることができたが、構造体の外側に多種多様な素材を取り付ける方法は、現地調査で得られた成果を基にする必要があったので十分には進まなかった。ただ、令和4年度にはそれらの課題をクリアにして実際の立体造形作品として発表する予定である。 今年度の作品研究は現地調査が必要な作品内部の構造に焦点をしぼるのではなく、祭礼の場や信仰の造形に焦点を当てた立体造形作品の制作に研究範囲を拡大することとした。特に本務校のある石川県内の様々な土着信仰の根付く空間や祭礼の場の調査を通じて、祭礼や信仰の場と造形に関する分析調査を行い造形芸術への転化を試みた。令和3年度の研究は祭礼、信仰の場と造形の関係についての調査とその造形化が中心となった。その成果は令和4年度の展覧会発表で公開することになっている。 本研究の現時点での調査研究、作品制作の成果については令和3年度金沢美術工芸大学紀要第66号「中空構造による彫刻作品の展開」として掲載した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
作品制作研究は視野を祭礼や信仰の場に拡大することによって、構造以外に環境の観点も加えることとなった。自然により近い信仰の環境が立体造形に与えてきた影響を広く考察することが出来たので、その意味では十分に成果があった。ただし、昨年度同様にコロナウイルス感染症蔓延の影響で、全国各地の祭礼の多くが中止となり県外への研究出張も困難になった。研究の中核と考えている全国各地の祭礼の造形の現地調査が2年連続で実施できず、研究全体が滞ることになった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の1年延長に伴って、本年度を研究最終年として位置付ける。2年にわたって行うことができなかった現地調査であるが、祭礼の実施状況は改善が予想される。ただし、次年度も県外から制作途中の調査が許されるかどうかは不透明である。直接の現地調査をメールや電話、リモートなどの遠隔調査に切り替える検討も始める。 中空構造を持つ立体作品の制作については、美術館での発表などを予定している。作品制作については構造だけではなく環境の面からも研究を進められているので、特に進捗に問題はないものと予想される。 また、本研究の成果は金沢美術工芸大学紀要に掲載する予定である。
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Causes of Carryover |
現地調査等の県外出張ができなかったために、旅費を執行することが出来ずに次年度使用額が生じた。繰り越した研究費は引き続き現地調査費用、および関連する立体造形物の制作、人件費などに使用する予定である。
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