2023 Fiscal Year Annual Research Report
中空構造を持つ立体造形物の基礎研究と彫刻表現の実践
Project/Area Number |
19K00224
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Research Institution | Kanazawa College of Art |
Principal Investigator |
芝山 昌也 金沢美術工芸大学, 美術工芸学部, 教授 (90435222)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 祭礼における造形物 / 造り物 / つくりもん / 一式飾り / 近代日本彫刻 / 彫刻 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和5年度は本研究の最終年度として、実地調査と文献調査を中心に行った。祭礼における「造り物」の実地調査では山陰地方の平田一式飾りを視察した。山陰地方では九州地方と同様、多くの祭礼における造形物が現代に受け継がれている。山陰で「造り物」は「一式飾り」と呼ばれている。使われる材料や制作方法は九州の日用品を使って造形物を制作する「造り物」と同様に、再利用できるように食器などには接着剤を施さない、穴を開けないなど共通点も多くみられた。平田一式飾りで制作される「造り物」に使用されている材料の殆どは陶器一式で、大阪の坐摩神社でみられた瀬戸物による「造り物」との共通点も多くみられた。大阪などの都市部から街道沿いに造形物が地方へと広がっていったことは明らかである。現地に残されている大正・昭和初期の写真には「台所用具一式」、「農具一式」、「仏具一式」、「酒道具一式」、「簿記用具一式」などの記載が多くみられる。このことから一式とは材料が一種類であることだけを指す言葉ではなく、用途の区別を示す言葉であったことがわかる。特に奉納物である一式飾りには「仏具一式」「佛具一式」が多く使われていたことが印象に残る。制作方法については、どの地方も中空構造を作成して材料を貼り付けるもので、骨組みは竹細工などから針金などに変わっている場合が殆どである。山陰地方と九州地方との比較によって「造り物」が江戸時代に全国的に伝播していった様子が概観できた。「造り物」は街道沿いに様々な商品と共に拡がっていき、それぞれの土地の特色を組み込みながら工夫がなされている。 作品制作について、日本の地域文化を組み込んだ彫刻作品は継続的に発表している。中空構造の調査を活かした立体造形作品についてもさらなる検討を加えて発表をしていく
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