2019 Fiscal Year Research-status Report
奄美における芸能文化の〈メディア媒介的復興〉と自尊意識再生の文化生産論的研究
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19K00230
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
加藤 晴明 中京大学, 現代社会学部, 教授 (10177462)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久万田 晋 沖縄県立芸術大学, 付置研究所, 教授 (30215024)
川田 牧人 成城大学, 文芸学部, 教授 (30260110)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 奄美島唄 / 奄美歌謡 / 奄美ポピュラー音楽 / 地域メディア / 民俗芸能 / 日本民謡協会 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、以下のような研究活動を展開した。 ①資料収集:奄美の文化に関する文献を現地の専門書古書店などを通じて収集した。また音楽資料については、過去に販売された音源CDなども現地で収集した。奄美にある音楽レーベルでもあるセントラル楽器が制作販売している奄美島唄・奄美歌謡の全てのCD類を収集した。ただ、奄美のポピュラー音楽についても随時収集しているが、まだ集めきってはいない。また奄美図書館で、数回にわたり、南海日日新聞社発刊の「月間奄美」における音楽関係記事を検索・複写作業を行い過年度の関係記事は全て複写した。 ②現地調査:奄美島唄のいくつかの大会への取材を行った。日本民謡協会奄美連合委員会主催の春の島唄大会を取材(2019.4.24-26)、同秋の島唄大会を取材(2019.15-17)、南海日日新聞社主催の奄美民謡大賞大会を取材(2019.5.14-16)、さらに名古屋で開催された中部奄美会総会(その大半は奄美芸能披露会)を取材(10/20)した。 ③現地調査:社会調査実習の学生を助手として奄美の音楽の担い手へのインタビュー調査を実施した(2019.9.4-11)。対象者は、現在の奄美で最も活躍している2人と1グループである。島外が島内に移住して音楽活動を続けるメジャーアーティスト。東京での活動をやめ島に帰省した後も、家業の傍ら音楽活動を続ける女性音楽アーティスト、島唄漫談ユニットを組んで20年以上奄美文化の媒介者として活躍している公務員バンドである。インタビューは、各2時間程度ですべてトランスクリプトを作成した。 ④奄美音楽図鑑の制作を開始した。奄美に関する島唄・歌謡曲・ポピュラー音楽で、発売されているCD・レコード、また新聞における音楽関係の記事などのデータベースづくりである。2019年度で半分程度まで作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
進捗状況については、進んでいる部分と積み残している部分がある。 ①研究初年度ということで、主に基礎資料の収集や基礎データの作成に終始した。ただ研究実績でも記述したように、奄美の島唄・歌謡曲関係の音源の収集はかなり進んだと思われる。現在とりあえず入手可能なものは全て収集している。あとは、市場に出回らない手売りなどの音源の収集が残されている。 ②音源資料のデータベース化もポピュラー音楽に関しては半分程度進んでいる。こうしたデータはこれまで存在しないので、地域文化研究への貴重な貢献になることが予想され、地元のメディア関係者にも協力を求めるとともに、成果が期待されてきている。また音源資料とともに、地元新聞に掲載された音楽関係の記事(イベント等)の一覧と記事自体のスキャンも進めている。これも、地元主要新聞の南海日日新聞のダイジェスト版である『月刊奄美』に関しては3分の2程度は終わっている。しかし、新聞本体の記事のスキャニングは手つかずで残っている。 ③文化産業論という視点から、メディア媒介化の一つである奄美の民俗文化の組織化については、取材を重ねて論考をまとめることができた。従来だれも注目することのなかった日本民謡協会奄美連合委員会の成立と発展についての社会史的な整理として公刊することができた。ただ、文化産業論の重要な位置付けとなる、大会化・録音メディア化などは資料はかなり集まっているが、それを整理することができていない。 ④従来研究代表者の加藤が、2名の共同研究者を媒介していたが、年度末に新型コロナウィルスの感染拡大により出張自粛となり、研究者同士のコミュニケーションが不足してしまった点がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策については以下のように企図している。 ①音源・文献収集:すでに多くの文献・音源は集め終わっている。ただ、まだ市場ででまわっていない音源などをきめ細かく情報を集め、また様々な音楽イベントに参加したりしながら地道に収集していく必要がある。また奄美大島以外の群島の島での収集も、完全ではなく、まだ現地調査の余地が残されている。地元古書店や音楽関係事業者と連携を強めつつ収集を進めていきたい。 ②現地調査の発展:奄美の音楽関係者のなかでポピュラー音楽関係は実質、ほとんど手つかずに近く残されている。島唄や奄美歌謡はある程度進んでいるが、そちらも完全ではない。こうした三つの領域で地元の音楽アーティストへの取材を進めていきたい。 ③奄美音楽図鑑のデータベースの進展と文化生産論からの音楽の社会史の整理:2019年度から着手した奄美音楽図鑑づくりは、まだ途上である。2020年度は、市販のCDなどに関しては完成させたい。また新聞スキャンも進めたい。この作業は社会調査実習の学生たちに研究助手として参加してもらっているので、対面型実習が可能となればよりスムースに進展すると考えられる。文化生産論からの大会化・レコード化についてはできる限り2020年度で論考をとりまとめたい。 ④比較研究の展開:沖縄やハワイにおける民俗芸能のメディア媒介的展開との比較を進めたい。すでに沖縄文化だけではなく、ハワイアンの資料は文献、音源ともに集め始めている。また沖縄の展開については研究している研究者との交流を始めている。こうした奄美と沖縄、ハワイとの比較の視点はこれからより深めていきたい。
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Causes of Carryover |
①新型コロナウィルスの感染拡大により、年度末の現地調査ができなくなってしまったため。 ②新型コロナウィルスの感染拡大により、年度末の共同研究者間の協議が中止となったため。
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Research Products
(6 results)