2019 Fiscal Year Research-status Report
Study of Yiddish art and culture of Eastern Europe in Modernism
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19K00234
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Research Institution | Kyoto University of Art and Design |
Principal Investigator |
樋上 千寿 京都造形芸術大学, 芸術学部, 非常勤講師 (30608740)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 東欧ユダヤ教 / イディッシュ / ハスカラ / クレズマー音楽 / 舞踏とジェスチャー |
Outline of Annual Research Achievements |
7月下旬~8月初旬にかけて、ドイツ・ヴァイマールで開催されたイディッシュ音楽に関する国際的なワークショップYiddish Summer Weimarに参加し、イディッシュ音楽(クレズマー音楽およびイディッシュ・ダンス)に関する最新情報を収集した。演奏家で音楽学者のジョー・ルービンJoel Rubin博士のセミナーではポーランド出身で1910年代にN.Y.で活動したクレズマー演奏家シュロイムケ・ベッカーマンShloymke Beckerman(1883/85/89-1974)の楽団による1923年録音のレパートリーを採り上げ、伝統的なクレズマー奏法と音楽的特徴について分析を行った。またその理解に基づいて演奏を実践した。また、クレズマー演奏家のベンジー・フォックス-ローゼンBenjy Fox-Rosen氏のセミナーでは、カントール音楽(ユダヤ教聖歌)について、ロシュ・ハシャナーに朗誦されるレパートリーの分析を通してカントール(ハザン)の歌唱法および宗教的背景について理解を深めた。この成果は、2月24日に東京両国のシアターカイにて開催した研究発表会「東欧ユダヤ音楽クレズマー演奏会」で発表した。 2月20日~23日にドイツより演奏家で作曲家・舞踏家のマーク・コヴナツキーMark Kovnatskiy氏を招聘し、東京両国のギャラリーカイにて「第4回東欧ユダヤ音楽ワークショップ Yiddish Academy Tokyo 2020」を開催した。演奏家や研究者など延べ14名が参加し、イディッシュ音楽の成り立ちについて、その歴史的・文化的背景など基本的な知識を共有したほか、イディッシュ・ダンスのジャンル毎に特徴的な楽曲とステップを習得し、楽曲と舞踏の関連性やその言語的特質についても理解を深めた。最終日には一般公開のセッションを開催し成果の一端を披露した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
7~8月に計画通りドイツ・ヴァイマールで開催されたイディッシュ音楽のワークショップYiddish Summer Weimarに参加し、イディッシュ音楽の伝統に関してさらに理解を深めることができた。 2月下旬にドイツより音楽学者で演奏家・作曲家のアラン・バーンAlan Bern博士と、演奏家で作曲家・舞踏家のマーク・コヴナツキー氏を招聘し、東欧ユダヤ音楽のワークショップと演奏会を開催する予定であったが、1月末より新型コロナウイルスの感染拡大が世界的な問題となり、低免疫症で治療中のアラン・バーン博士の招聘は取りやめとなった。その影響で、当初予定のプログラムでのワークショップと演奏会はできなかったが、コヴナツキー氏による献身的な指導で、事業目標をほぼ当初の予定通りに達成することができた。この音楽文化を支えてきた精神性や歴史的経緯などについて、世界的なイディッシュ音楽演奏家の助言を得られたことは大変有意義であった。我が国でのイディッシュ音楽に関する情報は極めて限られており、また指導者もいないため、これまで興味を持ちつつも本質的な理解に至らなかった演奏家が少なくないが、この活動により共有すべき情報をシェアできた意義は大変大きい。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度の成果を踏まえ、さらに発展的な成果共有を目指すため、当該年度もテーマを発展させて開催されるYiddish Summer Weimar(ドイツ、ヴァイマール、7月中旬~約2週間)に参加し、イディッシュ文化に関する最新の研究成果の共有と情報交換を行う。ただし、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大の終息が遅延する場合は海外調査を見送り、引き続き文献資料と視聴覚資料を収集し、その読み込みと分析を進める。研究成果の社会での共有を図るため、米国よりイディッシュ音楽の第一人者であるスティーブン・グリーンマンSteven Greenman氏(ヴァイオリン)を招聘し、東欧ユダヤ音楽ワークショップと演奏会を東京両国シアターカイにて2月に開催する。グリーンマン氏によるイディッシュ音楽に関するワークショップを主に演奏家と研究者を対象に開催するほか、演奏会ではグリーンマン氏が2018年に作曲した「クレズマー組曲」を国内演奏家との共演により日本初演する。この組曲はグリーンマン氏が1990年代より継続してきたイディッシュ音楽研究の成果を反映して作曲された大作であり、婚礼などで演奏された伝統的な東欧ユダヤ音楽のスタイルを踏襲したものである。この曲の共演を通して、伝統的なイディッシュ音楽の理解を深める。ただし、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大の終息が遅延する場合は海外からの招聘を見送り、国内演奏家による研究成果発表会(演奏会)を行う。また東欧ユダヤ音楽に関する情報交換を目的とする研究会を主に演奏家と研究者を対象に都内にて随時行うが、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、対面での集会が困難な状況が続く場合はオンラインでの開催とする。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大の影響により海外招聘者2名のうち1名の招聘を取りやめたため、旅費と人件費の使用額が当初予定よりほぼ半減した。その経費を次年度事業へ繰り越すことが可能となったため、前述の通り、海外から演奏家を1名招聘し、ワークショップと演奏会を開催する経費(旅費と人件費)に充当する。
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