2019 Fiscal Year Research-status Report
地歌箏曲における古態の楽器に関する研究~現物調査と楽器復元による受容の可能性~
Project/Area Number |
19K00248
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
長谷川 慎 静岡大学, 教育学部, 准教授 (00466971)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保田 敏子 京都市立芸術大学, 日本伝統音楽研究センター, 名誉教授 (10090200)
野川 美穂子 東京藝術大学, 音楽学部, 講師 (50218294)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 地歌 / 三味線 / 復元演奏 / 箏曲 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、以下の4点に集約される。(ア)地歌箏曲における古態の楽器についてさらにアーカイブ(音源及び楽器)を進めること。これまでの収集と現物調査をさらに進め写真撮影、法量の採寸を行う。SP録音についても引き続き収集しアーカイブを進める。 (イ)古態の楽器の楽器調整について検証する。特に三味線の皮張り「水張り」については引き続き調査を行い、職人、演奏家、研究者との意見交換を行いながらSP録音に残る音と高齢の実演家の耳に残る音の再現を試みる。検証の一環として古態の楽器の音に関して専門家からの聞き取りをおこなう。 (ウ)実演家に楽器を貸与し演奏表現の可能性を検証する。古態の楽器に関心を示す演奏家に協力を依頼し、長期間にわたって実際に演奏し稽古を積んでもらうことで演奏技術の向上をはかり、現代における古態の楽器の演奏表現の可能性を検証する。 (エ)成果発表会を開催し広く社会へ地歌箏曲の古態の楽器について発信する。上記4点で得た情報と成果を元にして、古態の楽器に関心を持つ数名の若手演奏家を研究協力者として依頼し、成果発表会として公開演奏会と公開講習会を開催する。研究初年度となる2019年度は、上記(ア)(イ)(ウ)(エ)を実施する予定で研究計画をたて、特に古楽器の復元と調整を行うことを第1とした。(ア)(イ)に関し、復元と調整にあたっては京都今井楽器店他の協力を得ながら3挺の三味線および3面の箏を演奏可能な状態とした。SPレコードを収集しデジタルアーカイブ化を進めた。(ウ)に関し復元と調整にあたっては研究協力者とともに文献や口頭伝承を検証しながら進め、完成した楽器を、研究代表者自ら舞台演奏したほか、研究協力者でに貸与し演奏表現についての意見を聞いた。(エ)に関し年度末に公開演奏会を予定していたが、コロナウィルス蔓延のために中止とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初に立てた年次計画に基づいて研究を進めたところ、予想以上に進捗している。特に音源資料、楽器復元については当初予想以上に成果があった。研究協力者による演奏発表会では、五八箏を貸与し研究協力者自身の野川三味線とともに楽曲演奏を行い、来場客へのアンケートを実施することができ、今後の研究への大きな示唆を得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は初年度の内容を踏襲しつつ、特に(ア)(ウ)(エ)について継続実施を行う。(ア) に関し、これまで収集したレコードの整理を進める他、収集家所蔵の音源の入手も行う予定である。(ウ) に関し、貸与している演奏家に引き続き現行の楽器との比較・検証を依頼し長期間にわたって実際に演奏し稽古を積んでもらうことで演奏技術の向上をはかり、現代における古態の楽器の演奏表現の可能性を検証する。(エ)について柳川三味線について首都圏で開催を行う予定であるが、コロナウィルス蔓延によりほぼ全ての演奏会が中止延期となっている現状を考え動画配信も視野に入れ発信を試みたいと考えている。
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Causes of Carryover |
研究分担者には、成果発表会での司会、解説を行なっていただく予定であったがコロナウィルス蔓延による開催中止のために関係する諸費用の支出がなかったことから繰越が生じた。
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