2019 Fiscal Year Research-status Report
Multi-Channel-Acoustic electronic Music and Its Development Using Sound Stream Moire Representation
Project/Area Number |
19K00257
|
Research Institution | Tokyo Denki University |
Principal Investigator |
小坂 直敏 東京電機大学, 未来科学部, 教授 (20366389)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 音脈モワレ表現 / 群化 / 多チャネル音響システム / 正弦波モデル / 音脈 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度(初年度)は、計画立案時の予算が減額され、空間音響で9chの音響スピーカーシステムを設置が不可能になったため、ステレオ受聴による音脈モワレの検討から開始した。 まず、音脈モワレ現象は、仮説に対する名称であったため、その現象の確認から研究を開始した。音脈モワレは、一つの音脈(発音体が一つに聞こえる音)の音信号波形を2つに分解し、それぞれが一つの聞こえを有するとする。この2つの音を2つのスピーカーから別々に出力するとき、場所により、2つの音が群化して元の音に聞こえたり、または群化せず分離したまま2つの音に聞こえたり、異なる音色に聞こえる現象をいう。 昨年度は、この仮説をステレオ受聴による心理実験により検証した。まず、1)正弦波モデルにより、音声を偶数倍音と奇数倍音に分離した音声を合成した。この音声のヘッドフォン受聴による仮説の現象を行った。その結果、左右に完全に分離した状態では群化は起こらないこと、また一方のチャネルに他方の音を音量の段階を追って混合させた結果、この混合量に応じて群化が向上することを確認した。次に、2)ステレオ受聴により、スピーカー中央位置でヘッドフォンと同様な条件で実験した。その結果、分離音をステレオ再生しても、空間上の音響の回りこみがあり、群化が向上することが示された。さらに、別実験で3)受聴位置を左のスピーカーの前から右のスピーカー前まで5箇所に変えながら、動実験を行った結果、場所により、群化度が変化することが確認できた。また、4)楽音の場合も同じ現象を確認した。 さらに、現象を直接的に観測するため、被験者が左右のスピーカー前位置を自由に動きながら群化が行われる場所を調べた。左右のスピーカーの中心が510cmで左側に偶数倍音の分離音声、右側に奇数倍音を再生したとき、左中心から172.5cmの位置で群化の境界が存在することを確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、3つの研究目標を掲げた。それらは、以下である。 1. 多チャネル音響固有な音楽表現として、音響知覚心理上の群化、音脈分凝、サウンドコラージュエフェクトを応用した音脈モワレ表現を確立する。2. ポストプロダクションとしてのオーディオレコーディング再生技術にならい、ミクストミュージックの再現法について検討する。3. 多チャネル音響、及び空間音響を用いた音楽表現の場を広く求めて本分野の発展につくす。 1について、要求した9ch分の予算が減額されたため、このシステムを用いての研究は再度見直し、2chにおける基本的な仮説検証に時間を割いた。遅れとは、この当初計画に照らして、という意味であるが、2chとして設定した以降、研究は上記のとおり進展している。この9ch等の多チャネルの扱いは、より2chの研究が発展したときの応用、と捉えなおした。すなわち、この1は昨年度は2chのみであるが、それなりの成果を得た。 2については、他研究者と組んでレコーディングの手法について検討を今年度から開始するつもりであったが、コロナウィルスの影響でスタジオで収録を行って実験を行う枠組みが実現できなくなり、3の準備にとりかかった。3について、初年度のACMP@北京の発表が都合で実施できなくなり、当初計画のひとつは実施できなかった。実施できなかった理由は先方のオーガナイザがもともと当方を招待する予定であったが、予算削減の結果、招待されなかったことによる。
|
Strategy for Future Research Activity |
まず、2番目の計画を来年度のまわすか、中止するかにして、1,3を深堀りする。1については、このまま2chを元にした検討を進める。 検討内容は、a) コンピュータによる分解を行わず、実楽器のみでのこのエフェクトの実現可能性を探る、b) 偶数、奇数倍音への分解以外のほか分解方法の手法について検討する。a)はコンピュータの力を借りずにこの現象が実現できれば、音楽演奏上に大変便利である。これまで奇数倍音と偶数倍音に分解して検討したが、2人の奏者のオクターブユニソンのケースを検討したい。b)はNMFを用いたサウンドコラージュなどの分解方法により、音脈モワレ現象を確認したい。
計画3.、すなわち、音楽制作への応用について、この2年の間に予定どおりのオーケストラ作品発表と最終年度にコンピュータ音楽の実現形態を考えている。 オーケストラの作品発表は本年実施予定で、一昨年から準備を進めているが、コロナ禍の影響で、現在も実施可能かどうか不明である。しかし準備を進めている。 来年度については、小規模のアンサンブルで、かつコンピュータ合成音も含めた作品形態の上で音脈モワレ現象を引き起こし、かつ音楽的に気をひくような表現として作品の側面と音脈モワレ現象のデモという2面を満たす制作を行う。これも2ch程度の実現と多チャネルの実現との2つの可能性を検討する。
|
Causes of Carryover |
9chの音響システムの研究として研究計画を提出したが、予算の削減された結果、もっとも根幹となるシステムの購入そのものが不可能となった。そのため、その一部の金額で、より縮小した2chのシステムを購入することも検討したが、既存のスピーカーシステムで初年度は研究が実施でき、音響システムは購入しなかった。 一方、本年はオーケストラ演奏を企画中であるが、このイベント費用が、他からの助成がなくなったため、参加費が割高になることとなり、その費用にあてるように考えている。なお、コロナ禍により、公演(11/6日を現在予定)そのものが延期になった場合は、来年度に実施する予定である。 また、旅費等についてもオンラインの発表が主になれば使用しないことになり、流動的である。また、スタジオでの収録についても同様で、ステップ3のまま続けばスタジオ実験ができるが、現在はこれらの実施も流動的である。
|
Research Products
(5 results)