2022 Fiscal Year Research-status Report
芸術団体の創造活動の自律性を高める助成のありかた~英国のアーツカウンシル制度研究
Project/Area Number |
19K00260
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Research Institution | Showa University of Music |
Principal Investigator |
石田 麻子 昭和音楽大学, オペラ研究所, 教授 (50367398)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
袴田 麻祐子 昭和音楽大学, オペラ研究所, 研究員 (40535548)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 芸術文化支援 / アーツカウンシル / 戦略的投資 / 舞台芸術政策 / 舞台芸術制作 / オペラ / 評価 / 助成制度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、英国内のアーツカウンシルの中でも、アーツカウンシル・イングランド(以下、ACE)の制度を研究の中心に据えたものである。ACEの助成制度において、いかにして芸術団体の創造活動のレジリエンスを獲得させるのか、その背景となる考え方に加えて、実際の助成制度設計と運用のありかたの検証を研究課題としてきた。具体的には、ACEによる1種類の団体助成と2種類の事業助成それぞれについて、目標の設定、助成金額、期間、対象となる組織等、具体的な制度設計を確認し、その意図の分析と芸術団体の創造活動の関係性とを導き出すケーススタディを、組織形態等のバランスを取りながら、複数実施した。こうした助成事業そのものや、助成事業から発展した活動の分析により、被助成団体側の収入構造や収入源の変化と対応状況の把握につなげた。 また、被助成団体との関係性を構築するためのACEの体制と人材育成、さらに助成側と被助成側の間での人材の流動性の検討も、本研究の重要な視点とした。 研究代表者(石田)は、単著『芸術文化助成の考え方』(美学出版、2021年)で、本研究成果からの知見を活かして、コロナ禍前からパンデミック後まもなくまでのイングランドのアーツカウンシル制度の運用、芸術文化支援の考え方について詳述した。 研究分担者(袴田)も学会発表や論文発表により、特に助成を受けた組織における具体的な評価のあり方に関する調査成果を公表してきた。 加えて、研究代表者(石田)は、『市民オペラ』(集英社新書)を2022年秋に発表した。これは、戦後日本のオペラの系譜および日本における芸術文化支援も含め、日本特有のオペラ制作の形態である市民オペラを軸にまとめたものである。劇場の外に、舞台芸術制作に必要となる技術や人的資源が蓄積されたことが、各地で企図された市民オペラの成立につながった経緯を文化政策の側面から特に明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
過年度および当該年度における複数の学会発表、論文発表に加えて、単著2冊など、本研究による知見を活用した研究成果発表をおこなってきた。なお、当初予定の日本の助成制度設計との比較検証は課題として残されている。おおむね順調に進捗してきたと言えるものの、コロナ禍への対応やその後の影響といった当初計画時になかった要素の検証も加えつつ、日本との比較研究を今後進めていく必要がある。また、ACEに関しても、評価制度の実態把握については、評価手法変更がおこなわれたことを踏まえ、継続していく必要があるとの認識を研究者間で共有している。
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Strategy for Future Research Activity |
イングランドのアーツカウンシル制度における評価の仕組みを明らかにすることと同時に、日本における助成制度および評価制度を検証することで、日英の助成制度に関する比較兼研究をおこなう。
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Causes of Carryover |
2020年度以降のコロナ禍による海外渡航の制限のため、引き続き海外調査ができなかったことにより、旅費の使用が予定額と大幅に異なる結果となった。そのため、研究期間を1年間延長して、研究計画の完成に向けた活動を継続していく。
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[Book] 市民オペラ2022
Author(s)
石田 麻子
Total Pages
288
Publisher
集英社
ISBN
978-4-08-721235-8