2019 Fiscal Year Research-status Report
演劇と市民社会:佐藤信による劇場創造とアジア演劇との交流事業に関する調査
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19K00264
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
梅山 いつき 近畿大学, 文芸学部, 准教授 (50505401)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 現代演劇 / 社会運動 / 野外演劇 / 小劇場演劇 / アジア演劇 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの資料調査等の研究成果をまとめた単著『佐藤信と「運動」の演劇 黒テントとともに歩んだ50年』(作品社)を刊行した。本書では、本研究が研究対象にしている佐藤信の活動について、中心的な役割を担ってきた劇団黒テントにおける活動を主に取り上げて論じたものである。 本書の執筆を通して、佐藤と黒テントの活動とは、演劇という分野を超えた社会運動でもあったことが明らかになった。佐藤たちは活動当初より、テントによる野外公演を上演することで劇場の外へと演劇を持ち出し、演劇を市民のより身近なものへと変えようと試みてきた。中でも、1970年代後半から80年代にかけて展開された、「赤いキャバレー」というシリーズは教育機関や労働現場に作品を持ち込み、観客と共に作品をめぐって議論しようとする、他の劇団には見られないユニークな取り組みだったが、その実態についてはこれまで多く語られないままであった。本書では、そうした佐藤と黒テントの独自の取り組みについて、関係者からの聞き取りや資料考証から明らかにした。 また、本書では近年、佐藤が公共劇場で取り組んでいる、演劇文化を市民社会により開いたものにしようとする試みや、アジアの近隣諸国の若手アーティストとの共同制作についても取り上げた。さらに、幼少期から今日に至るまでに佐藤が手がけた作品をリスト化し、詳細な年譜も作成した。近年の活動も含め、佐藤の創作活動を論じた研究書は本書が初である。また、黒テントについても、その活動はこれまで全容が明らかになってこなかった。そうした点で、本書の刊行は、今後、佐藤や黒テントの研究をさらに発展させる上で意義のあるものと言えるだろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初、研究期間の最終年度に予定していた単著の刊行を一年早く行えたことから、「当初の計画以上に進展している」を選択した。本研究では佐藤信の活動について、アジア演劇、市民社会というキーワードを立てて考察を進めているが、研究を進めるにあたっては、まず、佐藤にとって重要な創作拠点であった黒テントに注目する必要があると考え、これまでの研究成果の中から黒テントに関する部分をまとめ、単著としてまとめるに至った。本書をまとめることによって、佐藤の創作活動がどのように変容していったのか、各時期のポイントが明確になった。今後は、それを活かして研究を進めていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、研究を進めるにあたって、特に注力したいのは、佐藤が行ってきた90年代以降のアジア演劇との交流事業である。今回、刊行した書籍でもアジア演劇については取り上げたが、黒テントにおける取り組みや近年の事業が中心だった。本研究でも課題の一つにしていたフィリピンのPETAとの交流事業については詳細を知ることができた。一方で、佐藤に大きな影響を与えた、シンガポールの劇作家クオ・パオクンとの影響関係や、ダンサーの竹屋啓子と行ってきたアジアのダンサーたちの交流事業、ACAWについては十分な調査ができていないため、残された研究期間に行いたい。
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Causes of Carryover |
1月に行った国内出張の処理にあたり、必要書類の提出が遅れたため、次年度処理扱いとなった。今後はこのようなことのないよう十分注意したい。
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Research Products
(2 results)