2020 Fiscal Year Research-status Report
九州地域における伝統産業需要の計量分析-公統計・アンケート調査データをベースに-
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19K00265
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
内山 敏典 九州産業大学, 学術研究推進機構, 科研費特任研究員 (10151903)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
釜堀 文孝 九州産業大学, 芸術学部, 教授 (60320149)
黒木 宏一 九州産業大学, 経済学部, 講師 (00618150)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 公統計 / 時系列分析 / ラチェット効果 / 動学モデル分析 / 活性化戦略 / インバウンド / 海外市場 / マネージメント力 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度の研究代表者内山の研究および研究分担者黒木の共同研究は、“「家計調査」にみる伝統工芸品需要の時系列分析”である。2019年度は伝統産業の品目であるアンケート調査で、消費者意識に基づく伝統品目の需要構造を明らかにした。2020年度の共同研究は公統計である総務省統計局『家計調査年報』の全国および九州それぞれの伝統産業の品目に対応する時系列データを用い、品目需要のラチェット効果等の需要構造を明らかにするために、動学モデル分析をおこなった。研究で用いた動学モデルは基本的にKoyck=Nerlove型およびHouthakker=Taylorモデルを利用した。これらの計測結果から耐久消費財である伝統工芸品すべてについては、(1)価格効果はほとんど働いていないこと、(2)地域効果が働いていること、(3)所得効果が強く働いていており、このことがラチェット効果と関係していることが明らかとなった。 研究分担者釜堀の研究は、“伝統工芸の活性化戦略についての考察”である。この研究は伝統工芸品の衰退の原因と活性化について考察をおこなったものである。日本の伝統工芸は、生活の多様化による売上減少と職人の高齢化及び後継者不足、IT分野への対応などの多くの問題を抱えている。これらの原因についての解決策として、伝統工芸が儲かるための仕組みづくり、インバウンドと海外市場への対応する前の受け入れ環境と情報発信体制の整備、企画手法を使った製品開発などの必要性について言及している。そして、活性化のためには組合のマネージメント力と人材の強化、産地内での年齢や製品開発の多様化が必要であることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度の研究は、九州地方のアンケート調査関連に基づく消費者意識によるさまざまな伝統工芸品の需要構造の研究をおこなった。また、九州地方の伝統工芸品の新市場としてのインバウンド需要データから分析を通じて、商品戦略のための施策を明らかにした。2020年度の研究は、経済および社会変動の影響を受けやすい九州地方の伝統工芸品の需要構造を把握するため、公統計データを用いての計量分析をおこなった。伝統工芸産業の諸問題とそれらの解決策の指針を提案した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究としては、これらの研究から伝統工芸産業が抱える諸問題と解決策、伝統産業品に対するマイクロデータによる消費者意識に基づく需要構造と公統計データによる需要構造が明らかとなったので、これらの研究成果を大系化し社会に還元したい。そのためには、産地や学会出張によって情報収集をおこない、その情報を大系化する研究に加えて正確を期したい。現在、昨年度と同様、コロナ禍のおり、情報収集ができないことも考えられる。その場合、伝統産業の情報についてwebを通じて収集したい。
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Causes of Carryover |
おおむね研究計画に沿った研究は実施したが、コロナ禍の影響により学会及び視察等のリモートへの変更などにより経費の節減に努めた結果、次年度使用額が生じた。研究計画に沿って行う成果物の制作のため、これまでの研究成果を補強する調査に用いる予定である。
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Research Products
(2 results)