2021 Fiscal Year Research-status Report
第二次世界大戦後の日本における科学研究活動と米国外交政策の関係についての歴史研究
Project/Area Number |
19K00267
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
栗原 岳史 東京工業大学, リベラルアーツ研究教育院, 特別研究員 (50622544)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 国際関係と科学 / 日米科学協力 / 戦争と科学 / 軍事研究と科学 / 米軍資金問題 / 米軍の研究開発の歴史 / 日本物理学会「決議三」 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き,1960年代に行われた米軍など米政府機関から日本の大学などへの研究機関に対する研究資金の提供に関する歴史について,文書史料の分析や文献資料の調査などを行ってきた.新型コロナウイルスの世界的な流行の影響のため,本研究の主要な研究活動である米国国立公文書館など海外での文書調査をすることができなかったため,本年度では,すでに入手済みの文書史料の調査と分析を中心に研究活動を行い,あわせて関連する入手可能な文献や文書の資料の調査も行った. これまでの調査において,1950-60年代に米軍が日本の科学者の能力を高く評価して,共同の研究活動を目指したり,研究資金の支援を行ってきたりしていたことを明らかにしており,同時に,それらの活動に対して,日本国内から批判が起こり日米関係が毀損されることを米国務省が懸念していたことを明らかにしてきた. これまでに入手していた文書史料の調査を通じて,米国務省の強い要請を受けて,米軍と米国務省の間で,1961年に「日本における基礎研究活動の原則とガイドライン」が作成され,日本国内における米軍による科学研究活動にある程度の制限が加えられていたことを明らかにした.それによると,日本の大学に対する米軍の支援を,米軍からシヴィリアンの米政府機関へ移管することなっていた.しかし,この規定には例外があり,米陸軍による医学と生物学研究への支援は引きつづき継続することとされた.1967年に「米軍資金問題」として日本国内で大きな問題となったのは,この例外規定であったと思われる.しかし,実際には,この文書に記載された内容と異なり,医学と生物以外にも,物理学研究への支援も試みられており,この文書作成の経緯や,その有効性についてはまだ十分に明らかにできなかった.ここまでの研究成果を,2021年5月22日に開催された日本科学史学会年会において発表を行った.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
米国の公文書館など海外で文書史料の調査をすることが本研究の主たる研究活動であるが,新型コロナウイルスの世界的な流行の影響により海外出張が事実上できなくなったため,研究計画が大幅に遅れている.そのため,前年度と引き続き,日本国内から入手可能な文書の検索や調査を行っているが,これまでのところ,適切な文書史料を十分に調査できていない.それらと並行して,これまでに入手した文書史料の精査や,国内で入手可能な関連文献や資料の調査を中心に行っているが,計画していたことが十分にできていない.
|
Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルスの世界的な流行の影響により海外出張が事実上できなくなっていたが,このまま流行が治まって行けば,今年度中に,米国に海外調査に行くことが可能になると思われる.関連文献や先行研究の調査を中心に,海外調査のための事前の準備を十分に行い,いつでも海外に行けるように備えている.同時に,前年度と引き続き,日本国内で入手可能な文書の文献のの検索や調査もひきつづき行い,新型コロナウイルスの再流行のため再び調査に行けなくなった場合にも備えておく.米国での資料調査活動を行うことができなかったので,日本国内で入手可能な文献資料収集を行ったが,その差額を翌年度以降に計上する.
|
Causes of Carryover |
本研究は,米国国立公文書館や歴代大統領図書館などが所蔵する文書史料の調査を主要な研究活動としている.そのため,米国に渡航してある程度の期間滞在するための費用が研究費用の多くを占めることを想定している.しかし,新型コロナウィルスの世界的な流行のため,海外調査全体が停滞しており,今後,いつ研究活動を再開できるか判然としない状況が続いている. 次年度は渡航できるのであれば,そのための費用として使用する.また,前年度に引き続き,日本国内で入手できる文献資料や,インターネット上でも公開されている資料をできる限り利用することを行う.同時に,日本国内で利用できる資料の探索を行う.米国から支援を受けた研究について,日本国内にある文献史料の探索を現在すすめているが,これをさらにすすめる.海外渡航が可能になったときに備えて,米国内の史料の所在の調査をすすめていく.
|
Research Products
(1 results)