2019 Fiscal Year Research-status Report
The Origins of Marxian View on Technology.
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19K00271
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
市川 浩 広島大学, 総合科学研究科, 教授 (00212994)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 旧ソ連邦 / マルクス主義 / 技術論 / ハイム・ガルベル / 大テロル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,ソ連科学アカデミー・科学史=技術史研究所(1932-38年存立)や全連邦高等工業教育委員会「マルクス主義的技術史に関する委員会」を舞台に,1930年代のソ連でマルクス主義的技術論・技術史の方法論確立に力を尽くした研究者たちの研究活動を追跡し,その全体像を明らかにすることにある. 令和元年9月16日~20日,および10月21日~10月1日,ロシア連邦モスクワ市において,ロシア科学アカデミー・文書館,ロシア国立社会=政治史文書館,ロシア国立図書館で資料調査を実施した. ソ連科学アカデミー・科学史=技術史研究所は活発な理論活動を展開したが,初代所長ニコライ・ブハーリン(Николай Иванович Бухарин.1888~1938)の最終的失脚に連座するかたちで閉鎖され,事実上4年数カ月しか存立しえなかった.少なくない所員も弾圧された.平成31(令和元)年度においては,この研究所の概要と活動の軌跡を追究し,学会(日本科学史学会第23回西日本研究大会.徳島大学.令和元年11月16日)で発表し,論文としてまとめることに成功した.また,「マルクス主義的技術史に関する委員会」については,その活動のなかで急速に頭角を表し,のちにヴィクトル・ダニレフスキー(Виктор Васильевич Данилевский. 1898-1960)とともにソ連を代表する技術史家となるアナトリー・ズヴォルィキン(Анатолий Алексеевич Зворыкин1901~1988)の論壇登場の起源を明らかにした論稿も発表することができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ロシア科学アカデミー・文書館,ロシア国立社会=政治史文書館,ロシア国立図書館などにおける現地資料調査が功を奏した.また,ロシア科学アカデミー・哲学研究所のセルゲイ・コルサコフ(Сергей Николаевич Корсаков)氏の協力をえることができ,氏からも貴重な資料を提供していただいた.このおかげで予想を上回るペースで資料収集をおこなうことができ,順調に研究成果を生み出すことができた.
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Strategy for Future Research Activity |
今後、とりわけ,令和2年度における研究計画としては,(1)主な研究対象となるハイム・ガルベル(1903-1937)のマルクス主義的技術論・技術史の構想,理論的な枠組みを明らかにする論稿を現在執筆中であるが,これを早期に仕上げ,学会誌に投稿したい.現地で資料調査を実施し,(2)1930年代ソ連の高等工業教育機関教員の“マルクス主義的技術史”確立のためのさまざまな努力,(3)その過程で闘わされた“物質文化史”か技術史か,いずれが学術領域として確立されるべきか,という論争について調査し,それぞれ学会での発表,および学術論文執筆につなげてゆきたいと考えている.
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