2021 Fiscal Year Research-status Report
The Origins of Marxian View on Technology.
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19K00271
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
市川 浩 広島大学, 人間社会科学研究科(総), 教授 (00212994)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 旧ソ連邦 / マルクス主義 / 技術論 / ハイム・ガルベル / 大テロル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,ソ連科学アカデミー・科学史=技術史研究所(1932年設立,38年閉鎖),政府高等技術教育委員会「マルクス主義的技術史委員会」,国立物質文化史アカデミーなどを舞台に,1930年代のソ連でマルクス主義的技術論・技術史の方法論確立に力を尽くした研究者たちの研究活動を追跡し,その全体像を明らかにすることにある. 現地において種々の文書館に保存されている資料を調査することを本科研にもとづく研究のもっとも重要な研究方法と前提しているが、前年度に引き続き,新型コロナ・ウィルス感染症対策のため,現地での資料調査ができず、わずかにロシア科学アカデミー・文書館、同物質文化史研究所図書館やロシア国立図書館から提供されたスキャニング・サービスやロシア人の友人の親切によって若干の資料を確保しえたくらいであった。 それでも研究成果の発表の点では一定の前進をえることができた前年度と違い,資料の蓄積が尽きつつあった令和3年度は,7月27日(日本時間)に第26回科学史・技術史国際会議(オンライン開催)で前年度発表済みの旧稿を英語にして発表したほか,ソ連科学アカデミー・科学史=技術史研究所所長であったニコライ・ブハーリンの従来検討されてこなかった晩年の著書を紹介した研究ノートを発表し、その内容を,5月23日に日本科学史学会第68回年会で口頭発表したくらいで,国立物質文化史アカデミーにおける「技術史」をめぐる議論の詳細を明らかにした論稿を準備しつつも,ツメの部分で現地の文書館での資料調査が必要とわかり,執筆は中断したままである(令和3年11月7日,日本科学史学会第25回西日本地区研究大会で「“物質文化史”か“技術史”か?―1930年代初頭のソヴィエト国立物質文化史アカデミーにおける論争―」と題する“中間報告”は行った).
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナ・ウィルス感染症対策のため,現地での資料調査ができず,研究の進捗に重大な停滞をもたらしたが,ロシア国立図書館,ロシア科学アカデミー文書館,ロシア科学アカデミー・物質文化史研究所図書館、ロシア科学アカデミー・自然科学史=技術史研究所のコンスタンチン・トミーリン(Константин Александрович Томилин)氏などの協力により,前年度に比べると少数ながら,必要な研究資料の一部を居ながらにして入手することができた.とりわけ,ロシア科学アカデミー・物質文化史研究所図書館提供の資料はほとんどわが国では顧みられたことのない貴重なものであったが、なお,現地での資料調査が必要であり,最終的に論文に仕上げるにいたっていない.
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度における相対的な重点として,引き続き,1930年代のソ連でマルクス主義技術史学の形成をめざした第3の舞台として,「国立物質文化史アカデミー」に注目し,現地における資料調査を軸に,その研究活動の内実や技術史にたいする構想の詳細を明らかに課題に取り組み,執筆途上の論文を完成させたいと考えている. その後,わが国への同時代的影響について研究を進める予定である. 最終的な研究成果の発表については,昨年度までの成果を含め,最終的に1冊の学術書にまとめる展望も生まれつつあると考えている.
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Causes of Carryover |
多額の「次年度使用額」が生じた理由は,言うまでもなく,前年度に引き続いて,新型コロナ・ウィルス感染症対策(および,本年2月24日にはじまったロシア軍のウクライナ侵攻による航空便の運航停止)のため,年度内2回を予定していた現地での資料調査ができなかったことによる.一度,2022年2月にモスクワ,サンクト=ペテルブルグへの出張を計画したが、大学の規程に抵触するとのことで,やむなく取り消しとなった。 これについては,新型コロナ・ウィルス感染症が鎮静化したのち,旺盛に現地資料調査を実施することで解消したいと考えている.
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