2019 Fiscal Year Research-status Report
the origin of evolutionary psychology and adaptationism
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19K00277
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
松本 俊吉 東海大学, 現代教養センター, 教授 (00276784)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 進化心理学 / 進化的機能分析 / 適応思考 / 発見法 / 適応主義 / リバースエンジニアリング / ブートストラップ戦略 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の申請時の調書の研究計画には、2019年度の研究計画として「進化心理学の擁護派と批判派の議論の洗い直し」と記したが、諸般の事情により今年度は、2020年度の研究課題として挙げた「『進化的機能分析』における適応主義的前提の検証」を前倒しして実行に移し、学会発表2件、海外学術誌への投稿(審査待ち)一件という成果を得た。 2019年8月上旬にプラハで開催されたCLMPST 2019: 16th International Congress of Logic, Methodology and Philosophy of Science and Technologyの大会にて、 “How Can We Make Sense of the Relationship between Adaptive Thinking and Heuristic in Evolutionary Psychology?”という演題の一般報告を行い、進化心理学の中心的な推論法である適応思考(=進化的機能分析)を単なる発見法(heuristics)と解釈することによって、これまで批判者からなされてきた方法論的な観点からの批判を回避しようとする近年の進化心理学者の試みは、人間の心的構造の進化的起源を説明するという進化心理学本来の「レゾンデートル」を放棄し、その学問的統一性を危機に晒しかねない、と論じた。 8月下旬に自然科学研究機構岡崎コンファレンスセンターで開催された第13回生物学基礎論研究会では、上記のCLMPSTでの報告を日本語版として作り替えたものを報告した。 その後、上記二つの口頭発表の内容をさらに深化させたものを英文原稿“Making sense of the relationship between adaptive thinking and heuristics in evolutionary psychology”としてまとめ、11月にBiology & Philosophy誌に投稿したが、残念ながら翌年2月にリジェクトの通知が来た。そこで同月に改定原稿を今度はBiological Theory誌に投稿し、現在結果待ちの状態である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上にも触れたが、本年度の研究課題として調書に記載した「進化心理学の擁護派と批判派の議論の洗い直し」に関しては、文献調査を継続してはいるが、いまだ研究成果として公表するだけのまとまった洞察にいたっていない。そこで今年度は、今回の科研費に採択される以前から温めており、ある程度研究成果を得られる見込みの高い、「『進化的機能分析』における適応主義的前提の検証」という(当初は2020年度に遂行予定だった)研究課題に軸足を移し、一定の成果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、現在Biological Theory誌に投稿・審査中の論文を、(すんなり一度で受理されるのは難しいと思うので)とにかく根気強く掲載にまで漕ぎ着けることが、ひとまず最優先課題となる。しかしそれと並行して、前年度に遂行予定だった「進化心理学の擁護派と批判派の議論の洗い直し」という研究課題に本格的に着手することが、今年度の中心的なタスクとなる。その際意識しているのは、調書に書いたような1990年代の歴史的な論争だけでなく、その後21世紀に入ってから現在に至るまでになされてきた進化心理学周辺の生命諸科学の最新の動向にも目を配っていく事である。というのは、本助成研究の最終到達目標は、最終年度である2021年度の研究課題として調書に記載した「〈他でもありえたような道筋〉を描き出す」というものであるからである。これは中立進化説、進化心理学発生生物学、エピジェネティクスといった近年の「非適応主義」的な生命諸科学の理論的展開を踏まえ、90年代の進化心理学のパイオニア達が構想した過剰に適応主義的な研究プログラムとは異なる、より柔軟で可塑的な人間心理の進化的研究のオルターナティブの可能性を探るというものであり、そのための準備として、今年度は「温故」から「知新」へと段階的にシフトチェンジしていこうと考えている。
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Causes of Carryover |
3月にスペインで開催される国際学会参加予定であったが、コロナウィルス蔓延の影響で中止になった。
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