2019 Fiscal Year Research-status Report
History of decommissioning of first breeder reactors and its international comparison
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19K00279
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
小島 智恵子 日本大学, 商学部, 教授 (70318319)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 科学技術史 / 高速増殖炉 / 廃止措置 / 放射性廃棄物 / 再処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年次は, ドイツにおける高速増殖炉開発の概略史を作成することと, フランスにて資料収集をすることを実施した。 ①ドイツの高速増殖炉開発史 ドイツの原子力エネルギー政策史研究から着手し、1959年に「原子力エネルギー法」が制定されてから、1986年のチェルノブイリ原発事故を経て、2000年以降、脱原子力政策へと転向して2002年には「原子力エネルギー法」が改正されるまでの概略史を作成した。高速増殖炉開発に関しては、1972年に実験炉KNK-IIが臨界に達し、1973年には原型炉SNR-300の建設が開始したものの臨界に達することはなく、1991年には2基とも閉鎖が決定した。フランスの高速増殖炉開発と比較すると、原型炉においてドイツはループ型をフランスはプール(タンク)型を採用したということ、フランスではチェルノブイリ原発事故以前に、原型炉Phénixが1973年に、1985年には実証炉のSuperphenixが臨界に達していたという違いがある。一般にドイツの反原発への転向の契機は、チェルノブイリ原発事故であったと言われているが、高速増殖炉開発に焦点を当てると、同原発事故以前に技術的な問題で高速増殖炉の原型炉が臨界に達していなかったという点が転向の要因の一つであるということを明らかにした。 ②資料収集について フランスにおける廃炉に関する資料として、フランス原子力庁の年次報告書をフランス国立図書館とフランス原子力庁アーカイブズにて収集した。その結果、1945年以降報告書の中で廃炉に関する記載、具体的にはdemantelement という単語が初めて項目に出てくるのが1999年であることを見出した。このことから、1997年にフランス・マルクールサイトで再処理工場が閉鎖されたことが、フランスの原子力政策全体を廃炉へと向かわせたという仮説を立てるに至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和元年度は当初の計画通り、ドイツの高速増殖炉開発の概略史を作成し、フランスの国足増殖炉開発史との比較の基盤をつくり、資料収集に関しては、夏季休暇を利用して、フランスの国立図書館と原子力庁アーカイブズにて高速増殖炉廃止措置の資料を収集した。 フランスでの資料収集では、ドイツの高速増殖炉開発において、フランスの実証炉Superphenixとの共同開発が、予想以上に重要であることが分かった。Superphenixは、フランスの独自開発ではなく、フランス電力公社(EDF)が51%、イタリア電力公社(ENEL)が33%、残りの16%はドイツのRWE電力会社、ベルギーのエレクトラベル社、オランダのSEP社およびイギリスのニュークリア・エレクトリック社からなるコンソーシアムSBK社が出資して設立されたNERSA社によるものである。そこでSuperphénixの廃止措置資料の中にドイツの高速増殖炉廃止措置の動向も知ることができる資料が含まれていたのだが、その点は仏独の高速増殖炉廃止措置の比較研究を促進するために有益であった。ドイツは脱原発という見方が一般的であるが、RWE電力会社等、原子力を支持する立場もあることを見逃すことはできないであろう。 一方、春季休暇を利用して実施予定であったフランス・ショーにある解体中の原子炉の視察については、新型コロナウイルス禍により行うことができなかった。ショーではフランスEDFの技術者へのインタビューも期待されていたので、フランスでの新型コロナウイルスの状況を見定めメール等のインタビューを行いたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度の夏季休暇中8月下旬から9月中旬までは、ドイツの原子炉廃止措置に関する資料収集と、オプリヒハイムにある解体中の原子炉の視察を行う予定であったが、新型コロナウイルスの影響で、視察の実施に関しては、非常に困難であると予想される。そこでドイツの原子力政策史に詳しい大阪大学の木戸衛一先生他、様々なコネクションを通じて関連原子力機関から資料を収集したい。そしてオプリヒハイムの圧力容器の解体と遠隔操作の専門家に対して、web meetingによるインタビューを行う。 またドイツのEnBW社は、2000年から2010年までEDFの傘下にあったので、その間の資料は、既に過去の研究で協力頂いているパリのEDF歴史部署に問い合わせをして調査する。同様にフランス原子力庁アーカイブズにも、可能な限りデジタルデータを提供して頂くよう協力を依頼する。 海外視察が困難であるため、日本の廃止措置技術について調べることで、本研究の国際比較を充実させる。具体的には、日本原子力機構の敦賀廃止措置実証本部の竹内則彦氏等に協力を依頼し、廃炉が決定した日本の高速増殖炉もんじゅの廃止措置における技術的困難についてインタビューを行う。 夏季休暇以降は、収集した資料を整理し、必要文書・写真等をデータベース化する。収集した資料を基にドイツにおける原子炉廃止措置技術の歴史について、年度末3月の日本物理学会で研究成果を発表する。この際、日本の原子炉廃止措置への影響という分析を加える。
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Research Products
(6 results)