2023 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19K00283
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Research Institution | Yokkaichi University |
Principal Investigator |
斎藤 憲 四日市大学, 関孝和数学研究所, 研究員 (10221988)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | Apollonius / Conics / Mathematical diagrams |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 図版の再描画:本研究課題では,アポロニオス『円錐曲線論』について,(1)すべての現存写本の原型であるV写本(Vat.gr.206)の図版を見やすく再描画し,誤りがあれば指摘した図版の校訂版,および(2) V写本の図版を,数学的に正確な円錐曲線で書き換えた図版,の作成を目指した.(1)については必要な情報を付して早期に公開予定である.(2)は最終年度に必要なプログラムを作成した.今後作業を進める. 2. 写本の図版の特徴:写本の図版では曲線が円弧で代用されているため計量的な正確さは犠牲にされ,テクストを参照しても命題の理解が困難な場合がある.古代の読者はテクストの記述を頼りに,改めて図版を描いていた可能性がある. 3. Overspecification:円錐曲線は径(diameter)と規則線(ordinate)によって議論されるが,これらは互いに垂直とは限らない.写本でも径と規則線が垂直でない図版が多い.エウクレイデス『原論』の図版では「垂直であっても良い線は垂直に描く」ことが多い(overspecification 過剰な条件設定). 『原論』の図版のoverspecificationが古代に遡るのか,書写の過程での単純化の結果かは,決着を見ていない.『円錐曲線論』にoverspecificationが少ないことは,overspecification が書写の過程で起こったという主張への反証になりうる.しかし一方,現存V写本(12-13世紀)は,6世紀のEutociusの校訂(図版も含む)に基づくもので,EutociusからV写本が書写されるまでの時間は700年程度でしかない.『円錐曲線論』のような高度な著作が頻繁に写し継がれたとは考えられず,そのため『円錐曲線論』の図版がoverspecificationを免れたという可能性もあり,決定的な結論は得られない.
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Remarks |
作成した図版をこのサイトに順次掲載する.
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