2020 Fiscal Year Research-status Report
Characteristics of Industrial Internet of things in Japanese Manufacturing Industry and Formation of Basic Industrial Technology
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19K00284
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
山崎 文徳 立命館大学, 経営学部, 教授 (70411204)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 真悟 立命館大学, 経営学部, 准教授 (10623358)
永島 昂 立命館大学, 産業社会学部, 准教授 (10733321)
杉本 通百則 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (40454508)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 基盤的産業技術 / 機械工業 / 装置工業 / 自動化 / FA / PA / 課題解決型ソリューションサービス |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、前年度までの企業調査及び日本科学史学会の公開シンポジウム(2019年5月)をもとに、『科学史研究』に研究成果をまとめた。つまり、日本製造業において、既存の取り組みである現場労働者の多能工化や改善活動の「見える化」を、常時作業・工程を監視するセンサーを導入する産業IoTによって作業・管理の熟練機能の強化・補完がなされていることを明らかにした。また、設計技術者だけでなく生産技術者や現場工員の有効な提案を製品設計に取り入れたり、企業や工場の特殊的な状況にあわせて生産性を高めてきた1970 年代末からの自動化の取り組みの延長に産業IoTが位置づいていること、したがって顧客の特殊的なニーズに応える課題解決型のソリューションサービスを日本の産業IoTの特徴とした。 ドイツが「インダストリー4.0」をモデルとして、経済成長や競争力強化、効率化推進を基本的目標として通信規格などの標準化を試みるのに対しては、日本の「ソサエティー5.0」は長期的な政策理念および中小企業対策が欠如している。産業政策や労働環境を含めて特徴づければ、日本企業の自前主義・個別最適化・リーン生産・長期雇用・長時間過密労働等の要因により、標準化に対しては独自の困難を抱えているのである。 個別分野についてみると、鉄鋼・鋳物技術では、鋳物づくりで重要な技能、経験、ノウハウの内容が時代によって変化してきた。高度成長期以前は造型工が個人的に蓄積した身体的な技能や経験が重視されたが、高度成長期に機械化が進展した結果、製造経験やノウハウ、鋳造工学における工学的な知識が設計で重要になった。2000年代には、それまでの要素を基礎として、鋳造CAEという情報技術が活用されるというように産業IoTが展開されてきたのである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度の研究実績としては下記の4点を挙げることができる。しかし、2020年2月頃から拡大したコロナ禍の影響によって、企業の実態調査を実施することは難しくなり、当初の研究計画からの遅れがみられる。 1.年度内に3~4回程度のweb会議による研究打合せとメールによる打合せを行なった。 2.メンバーそれぞれは、当初設定した分担、つまり非量産型機械技術(航空機技術)、量産型機械技術(自動車技術)、装置技術(化学技術・鉄鋼技術)、装置技術(鋳物技術)といった分野ごとに個別の研究やそのまとめを行なってきた。 3.2020年10月に出版された『科学史研究』で、前年度に行った学会シンポジウムの内容を研究成果物としてまとめた。その過程で、研究打ち合わせを行い、認識を共有、整理することができた。 4.2020年11月~21年3月にかけてドイツの研究グループと、webによるミニシンポジウムを計3回実施した。その中で、本研究の成果を、日本における産業IoTの実態として報告した。
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Strategy for Future Research Activity |
日本製造業の特質を明らかにするために、1970年代から2000年代までの自動化の展開についてさらに具体的に明らかにする。その際に、FAにおいてはPLC、PAにおいてはDCSの歴史的発達を段階的に分析する必要がある。この計画は2020年度からのものではあるが、コロナ禍のもとで思うように研究調査を実施できなかった。その経験をふまえて、これまでに訪問調査を行なった企業に対して、場合によってはwebを用いたヒアリング調査を行う。そうすることで、それら制御機器がどのような産業のニーズに対応して発達したのかを明らかにし、日本製造業における自動化の歴史の延長上に産業IoTの取り組みを位置づける。その際に、ドイツやアメリカをはじめとする国外企業のインダストリアルIoTに対する取り組みを意識しながら、日本国内もしくは日本製造業における取り組みの特質を明らかにする。 個別分野についてみると、鋳物技術については、機械工業のサプライチェーンの末端に位置づくことが多い素形材産業の過去30年間において、マクロ経済レベルでの成長低迷、ユーザー企業における生産のグローバル化と国内生産のコスト抑制・低減といった経済環境・取引関係の変化の影響を強く受けてきた。素形材産業の大多数を占める小規模企業は事業継承問題に直面しており、その多くは転廃業をせざるを得ず、事業所数は減少傾向にあり、M&Aも活発化した。素形材産業の中でも鋳物産業の量的縮小は著しく、国内の鋳物調達の逼迫化が懸念されている。こうした状況のもとで、従来の取引関係にとらわれず市場開拓を進めている鋳物企業集団について、近年の産業IOT化の取り組みについて考察する。
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Causes of Carryover |
2020年度はコロナ禍のために研究計画が大きく遅れ、予定していた企業調査等を実施できなかった。2021年度は、コロナ禍が収束することを見計らって、企業調査を実施する。ただし、事態が好転しなかった場合は、web会議システムなどを利用してヒアリング調を実施する。
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Research Products
(9 results)