2019 Fiscal Year Research-status Report
History of high voltage electron microscopy supported by using oral history
Project/Area Number |
19K00287
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Research Institution | Nagoya Industrial Science Research Institute |
Principal Investigator |
黒田 光太郎 公益財団法人名古屋産業科学研究所, 研究部, 研究員 (30161798)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 超高圧電子顕微鏡 / 学術振興会第37小委員会 / 300kV電子顕微鏡 / 産学連携 |
Outline of Annual Research Achievements |
電子顕微鏡とりわけ超高圧電子顕微鏡の製造および応用技術において、日本は世界をリードしてきた。超高圧電子顕微鏡は、加速電圧が概ね500kV以上の電子顕微鏡で、透過率が高く、収差補正なしでも高分解能像が得られるなどの特長があり、電子顕微鏡内その場観察実験に応用されるなど、学術面でも大きな貢献を果たしてきた。日本の研究機器の中でも特徴ある発展を遂げてきた超高圧電子顕微鏡は、その開発の始まりからは70年になっており、その科学技術史を関係者の証言を得て記述するには現在をおいてない。 超高圧電子顕微鏡の開発前史を調査研究した。1939年に設立された学術振興会第37小委員会(瀬藤象二委員長)のもとで電子顕微鏡開発がすすめられ、加速電圧50kV級の電子顕微鏡が1940年代初期に開発された。学振37小委員会が1947年に閉じられた後も学術研究会議電子顕微鏡特別委員会(瀬藤委員長)に引き継がれ、これが母体となって電子顕微鏡学会が1949年に設立され、委員会は発展的に解消された。1949年には文部省科学研究費電子顕微鏡総合研究委員会(瀬藤委員長)が発足している。1950年に谷安正(東大)を中心に、当時の主な電子顕微鏡研究者が参加した研究組織ができて、朝日新聞の奨励金も得て、高い加速電圧の電顕の試作がはじめられた。装置開発は名古屋大学・日立製作所グループと京都大学・島津製作所グループ、日本電子が担当した。 1952年には加速電圧150kVでの電顕観察が可能になったが、300kVの電顕が完成したのは数年後のことであった。名大・日立グループはVan de Graff起電機を高圧電源に用いた電顕の運転に1954年に成功している。京大・島津グループは3つの高圧電源タンクを繋いだ高圧電源を用いて1957年に300kVの電顕を完成させた。この時期に産学連携によって超高圧電子顕微鏡の礎が築かれた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
超高圧電子顕微鏡開発初期について調べた。当時の関係者に直接に話をうかがうことができなかったが、永田文男氏(元日立)に提供いただいたインタビュー記録を利用することができた。今年度は加速電圧300kV電子顕微鏡の開発までを主に調べたので、来年度にはより高い加速電圧の超高圧電顕の開発の調査を進めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
1960年代になり加速電圧500kV超高圧電子顕微鏡の開発がすすめられ、さらに高加速電圧の超高圧電顕も開発され、市販されるようになった。この開発に携わった関係者に話を聞いて超高圧電顕の科学技術史を編みたい。また、超高圧電顕を使用した研究に関しても調査したい。
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Causes of Carryover |
超高圧電子顕微鏡の開発前史を調査したが、当時の関係者に直接話を聞くことができなかった。また、年度末にはコロナ禍で移動がままならなくなり、旅費や謝金などの諸経費を使用できず、次年度使用額が発生した。
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Research Products
(7 results)