2019 Fiscal Year Research-status Report
国語科文学教育における創作理論と読解理論の相関研究
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19K00292
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
西田谷 洋 富山大学, 学術研究部教育学系, 教授 (70378230)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 読解理論 / 創作理論 / フレーム / 日本近代文学研究 / 文学教育 / 国語教育 / 教科書教材 / 児童文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は文学教育における創作理論の研究という視点から二十一世紀の国語教育・日本近代文学研究の読解理論を検討し創作理論の充実を図ることを目的とする。本研究では、創作技法が読者への効果を発揮するためには読解を想定した技法の運用が必要であり、読解理論と創作技法の連携が教育効果、創作の完成度が上がることから、効果的な技法の運用とその手順に関わる教育内容の検討とその充実を図る。 そのため、創作理論の使用時に読解理論をいかに効果的に組み込むことができるかを解明することが目的である。本年度では、ひとまず、そうした研究計画全体の概説的な側面をもたせつつ、各論として、国語教科書教材や児童文学作家の作品・言説を中心に検討した。 まず、国語科教育における読解行為研究の専門家である山元隆春広島大学大学教授を招いた講演会を開き国語科教育における読解理論の展開についての知見を得た。 次に研究代表者の研究活動について整理する。第一に任意の児童文学作家・安房直子の自覚する創作技法(主たるエッセイ)と童話作品のズレを探ることで作者の意図と読者への効果の差異があり、読者が読解することで作品が理解されることを確認した。第二に、読者が読解するトリガーとしての国語教科書教材に採用された任意の作者・江國香織と小川洋子が仕掛けた作品のフレームとして、江國童話では比喩、「百科事典少女」では代行、『海』では共働関係を利用した読解のあり方を検討した。第三に、国語教科書教材・児童文学とは異なるが小説作法書は小説創作に係わる点で重要であり、今回、徳田秋聲名義の小説作法書の論述から作者が創作時にいかに読者を意識しているかを検討した。その結果、作品を媒介とした作者と読者のコミュニケーションは断絶しているが故に双方を志向することが求められることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初一年目の作業として予定していた、近年にまとめられた研究者等の創作理論・読解理論の書籍・論文集や雑誌論文の収集を行い、作家の創作論について検討した。しかし、それら諸理論の整理には至らず、作家の読解論の検討もできなかった。しかし、二年目の作業に予定していた読解理論と創作理論との架橋作業の一環として作家の創作作法書における読者意識を検討した。このように、執筆・発表依頼等に応じた作業となったこともあり、必ずしも当初予定の通りに展開できたわけではないが、一年目の積み残しがある一方で、二年目の先取りも行えた点で、上述の進捗として自己評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
近年まとめられた研究者等の創作理論・読解理論の書籍・論文集や雑誌論文の追加収集を行い、それらの狙いと実態を測定する。その際、文字作品の優れた達成への関与度を検討し、コンテクスト・物語内容・物語表現の各レベルで創作理論と読解理論の相関をはかり理論的な枠組みを再考する。 また、その際、文学理論の読解系の主張が作品の高度な達成には必要であるという仮説の検証を行う。その際、心情主義的な読解、倫理的な読解、レトリカルな読解等と創作との関係を整理する。さらに「文学国語」の創作面での指導事項・指導内容に十全たる読解が必要であることを検討する。
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Causes of Carryover |
講演会を行った残額で物品購入(図書)を行った際に科研費の予算を超過し、それを防ぐため別の予算に回した際に若干の残金がでたため。しかし、次年度の物品購入(図書)に回すことで研究計画の充実を図れる。
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Research Products
(8 results)